研究課題/領域番号 |
22K07082
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
瀬川 孝耶 国立感染症研究所, 薬剤耐性研究センター, 研究員 (40769684)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 腸球菌 / フェロモン / プラスミド / 転写制御 / 薬剤耐性 / 凝集 / 接合 |
研究実績の概要 |
腸球菌はヒトの腸管の常在菌ではあるが、宿主の免疫の低下などにより、敗血症などの重篤な病態を引き起す。また、種々の抗菌薬に対して自然耐性を示し、さらに伝達性プラスミドにより薬剤耐性を獲得し高度耐性となる。腸球菌では、染色体上の遺伝子から産生されるペプチドを性フェロモンとして利用し、効率良く接合伝達するプラスミドが知られている。このプラスミドは薬剤耐性遺伝子を効率的に拡散する恐れがあるが、日本での実態は不明である。また、フェロモンを介した遺伝子転写制御機構も未解明な部分が多い。本研究では、日本全国から収集した腸球菌のフェロモン誘導性プラスミドの解析、さらにフェロモンを介した転写制御機序の解析を行うことを目的とし、日本におけるフェロモン誘導性プラスミドの実態と薬剤耐性における役割、転写制御因子の機能を明らかにすることで、薬剤耐性の拡大を阻止する方法や新たな治療法を開発することが可能となる。 令和4年度では、日本全国から集められた腸球菌10,451株を対象として凝集試験によるフェロモン誘導性プラスミドの有無の検証を行い、計2,982株が陽性だった。また、168株のゲノム配列を次世代シーケンサーで解読したところ、58株のE. faecalisがのべ4種類のフェロモン誘導性プラスミドを保有していることが示唆された。今後、追加で1,000株の次世代シーケンサーによる解析を行い、さらに代表的なフェロモン誘導性プラスミドの一つであるpCF10を用いたプラスミドの遺伝子発現制御機構の解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度では、日本全国から集められた腸球菌10,451株(E. faecalis 5,924株、E. faecium 4,527株)について、保有するプラスミドの解析を検討した。対象菌株が、フェロモン誘導性プラスミドを保有しているかを確認するために、プラスミド非保有E. faecalisが培養上清に分泌するフェロモンペプチドを用いた凝集試験でスクリーニングを行ったところ、E. faecalisで2,422株(40.9%)、E. faeciumで560株(12.4%)が凝集した。当初、凝集する株は1000株程度と予想しており、全株を次世代シーケンサーで解読する予定だったが、予想を上回る株が陽性だったため、選抜した腸球菌168株(E. faecalis 95株、E. faecium 73株)についてゲノム解読を行い、58株のE. faecalisが、のべ4種類のフェロモン誘導性プラスミドを保有していることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度の凝集スクリーニングで想定を上回る株が陽性だったため、追加で計1,000株を選抜し、次世代シーケンサーによる解析を行い、フェロモン誘導性プラスミドの特徴を明らかにする。また、代表的なフェロモン誘導性プラスミドの一つであるpCF10の転写制御因子PrgXの制御機構の解析を行う。PrgX変異体とフェロモン・インヒビターペプチドを使用し、PrgX/ペプチド/DNAの結合領域と結合親和性を解析することで、ペプチドを介した転写調節におけるPrgXの構造で重要な部位を決定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末納品等にかかる支払いが、令和5年4月1日以降となったため。 当該支出分については次年度の実支出額に計上予定であるが、令和4年度分についてはほぼ使用済みである。
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