研究実績の概要 |
本研究の目的は, ネジウイルスという新奇性の高いウイルスについて, 感染・増殖の基盤となるRNA合成メカニズムを解明し, ひとつのモデルとして確立することである. ネジウイルスは他のウイルスの RNA複製酵素 (RdRp) の機能では説明できないタイプのRNA合成を行っており, この詳細を解析す ることで, ウイルスが発展させてきた多様な分子機能の新たなる一面が明らかにすることを目的としている。本研究ではまず、ネジウイルスの持つ特異なサブゲノムRNA合成の方法について解明すべく、合成RNAを用いたレポーターアッセイシステムを構築することとした。 ネジウイルスは感染細胞の中で、ORF2およびORF3をコードするサブゲノムRNAを生成するが、それぞれのサブゲノムRNAの鋳型となる対応したRNAは存在せず、鋳型はゲノムの逆鎖RNAであると考えられている。そこで、ネジウイルスの1種であるブストスウイルスを用いて、ORF2、ORF3をコードするサブゲノムRNAの5´末端の配列を基準に、逆鎖の配列を10ー60塩基持つ、領域の異なる配列をそれぞれ合成し、これにレポーターとなるLuciferase遺伝子を融合したRNAを合成した。この際、鋳型鎖RNAの3´末端へのポリAの付加、ならびに5´末端へのキャップの付加を行い、それぞれの修飾を持つRNAの細胞 (ヒトスジシマカ由来C6/36細胞) への導入を行った。今後はこれらの鋳型レポーターRNAを用いたウイルス感染細胞内でのサブゲノムRNAの合成能比較を行い、サブゲノムRNA合成に必要な配列の同定を進める予定である。また本研究材料であるブストスウイルスとは別に、野外捕集蚊から新規のネジウイルスを同定することに成功したため、次年度以降に計画しているウイルス種間の配列保存性の機能比較に用いる予定である。
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