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2023 年度 実施状況報告書

ウイルス性基本転写因子の核内集積から解き明かす新たな遺伝子発現制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K07090
研究機関東北医科薬科大学

研究代表者

神田 輝  東北医科薬科大学, 医学部, 教授 (50333472)

研究分担者 北村 大志  東北医科薬科大学, 医学部, 助教 (20706949)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードEBウイルス / 複製コンパートメント / RNAポリメラーゼII / BcRF1
研究実績の概要

本研究は、ウイルスの後期遺伝子の発現機構の解析を通じて、細胞の違いによるウイルス産生効率の違いの要因について明らかにすることを目的として研究を行っている。
昨年度の研究により、B95-8細胞にBZLF1遺伝子(ウイルス産生感染のスイッチ遺伝子)を誘導発現することで細胞核内に子孫ウイルス産生の場である「複製コンパートメント」が効率よく形成されるシステムを確立した。そこでこのシステムを用いて、宿主の遺伝子転写を行うRNAポリメラーゼII(RNAPII)の局在と、ウイルスの複製コンパートメントとの関係を調べた。その結果、ウイルス産生が行われていない細胞核では宿主RNAPIIが宿主クロマチン上に局在するのに対して、複製コンパートメントが形成された細胞核内では宿主RNAPIIの大部分が複製コンパートメントに移動・集積することを見出した。RNAPIIは転写開始から伸長過程に移行すると、そのC末端領域(CTD)のリン酸化部位が変化することが知られている。そこでCTDの部位特異的リン酸化抗体を用いてRNAPIIの局在を調べた結果、複製コンパートメントにはCTDの特定部位がリン酸化したRNAPIIが強く集積していることを見出した。
またウイルスの後期遺伝子発現制御にかかわるウイルス遺伝子産物BcRF1(viral TATA-binding protein, vTBP)の解析も進めている。昨年度の研究により、従来使用してきたウイルスのBcRF1蛋白質に対する抗体の特異性に問題があることが判明したため、新たにBcRF1特異的抗血清を作成した。得られた抗血清により、強制発現したBcRF1タンパク質をウェスタン法で検出可能であった。今後、BcRF1の細胞内局在解析へと応用する。
また研究分担者は、EBウイルス株の地域差に着目し、EBウイルス臨床株について、本研究と密接に関連するウイルス遺伝子の塩基配列決定を行った。その結果、東アジア地域のEBウイルス株の特徴を明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

子孫ウイルス産生の場である複製コンパートメント形成を効率よく観察できるB95-8細胞はマーモセット由来の不死化Bリンパ球細胞株(リンパ芽球様細胞株)である。この細胞はEBウイルス依存性に増殖する細胞であり、この細胞に感染しているEBウイルスゲノムを細胞内で改変し、改変した組換えウイルスを産生する細胞に転換する技術は未だ確立されていない。そのため新たな組換えEBウイルス産生細胞を効率よく作成可能な細胞は現時点ではHEK293細胞に限定されている。しかしながら、そのHEK293細胞で複製コンパートメント形成を効率よく観察する実験系が確立できていない。またウイルス蛋白質BcRF1の細胞内局在解析を行うために必要な抗血清の取得に時間を要したため、その後の解析に遅れが出ている。

今後の研究の推進方策

ウイルス産生のスイッチ遺伝子であるBZLF1遺伝子誘導発現B95-8細胞を用いてウイルス蛋白質の複製コンパートメントへの集積を調べる過程で、別の初期遺伝子産物を認識する抗血清を用いて複製コンパートメントを容易に検出できることを見出した。そこでこの遺伝子産物に対する抗血清を用いた解析を進めつつ、新たに取得したBcRF1に対する抗血清の有用性を検討する。また同じ実験系において、RNAPIIの部位特異的CTDリン酸化抗体とウイルス遺伝子産物に対する抗血清を用いた多重染色により、複製コンパートメントにおけるRNAPIIのCTDリン酸化状態の詳細を解析する。またEBウイルス産生HEK293細胞におけるウイルス産生効率を改良する試みを継続する。そしてB95-8細胞とHEK293細胞の間で複製コンパートメント形成効率、および後期遺伝子発現効率の違いが生じる原因を追究する。

次年度使用額が生じた理由

「現在までの進捗状況」の「理由」に記載したように、BcRF1蛋白質を認識する抗血清の取得に時間を要したため、以降の実験を行うことができなかった。またHEK293細胞でのウイルスの複製コンパートメント形成が十分に観察できなかったため、新たな組換えウイルスの作製へと進むことができなかった。一方で、東アジア地域のEBウイルス臨床株の解析において一定の成果が得られたため、本年6月末から7月初めにかけてボストンで開催される国際学会において、現在までの成果を発表し、情報交換を行う。次年度使用分は、各種実験に必要な消耗品の購入のほか、上記国際学会への参加費用に充てる予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2023 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Growth Transformation of B Cells by Epstein-Barr Virus Requires <i>IMPDH2</i> Induction and Nucleolar Hypertrophy2023

    • 著者名/発表者名
      Sugimoto Atsuko、Watanabe Takahiro、Matsuoka Kazuhiro、Okuno Yusuke、Yanagi Yusuke、Narita Yohei、Mabuchi Seiyo、Nobusue Hiroyuki、Sugihara Eiji、Hirayama Masaya、Ide Tomihiko、Onouchi Takanori、Sato Yoshitaka、Kanda Teru、Saya Hideyuki、Iwatani Yasumasa、Kimura Hiroshi、Murata Takayuki
    • 雑誌名

      Microbiology Spectrum

      巻: 11 ページ: e0044023

    • DOI

      10.1128/spectrum.00440-23

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Epstein-Barr virus strains transmitted among Transeurasian language speakers2023

    • 著者名/発表者名
      Hiroshi Kitamura, Iwao Kukimoto, Misako Yajima, Teru Kanda
    • 学会等名
      The Joint 24th International Conference on Emerging Infectious Diseases in the Pacific Rim
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 胎盤特異的マイクロRNA群が誘導するサイトメガロウイルスの産生2023

    • 著者名/発表者名
      生田和史, 矢島美彩子, 北村大志, 神田輝
    • 学会等名
      第70回 日本ウイルス学会学術集会
  • [学会発表] 全長ウイルスゲノム配列による東アジア地域EBウイルス株の系統解析2023

    • 著者名/発表者名
      北村大志, 生田和史, 矢島美彩子, 神田輝
    • 学会等名
      第70回 日本ウイルス学会学術集会
  • [備考] 東北医科薬科大学 微生物学教室(神田研究室)

    • URL

      https://tmpukandalab.com/

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公開日: 2024-12-25  

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