クライオ電子顕微鏡を用いてマウスノロウイルス感染性粒子とヒトウイルス様中空粒子(VLP)の構造解析を行い、最近、ノロウイルスが突起の変化により可逆的な2つの構造(突起下降:Aタイプ、突起上昇:Bタイプ)を示すことを発見した。この研究では、ノロウイルスのキャプシド内における2つの構造の生理的な意義を解明し、これを応用した治療薬やワクチンの開発を目指している。 細胞受容体分子の結合位置の解析:細胞受容体CD300lfとウイルス粒子の結合を観察し、CD300lfによるウイルス粒子の分解を確認した。クライオ電子顕微鏡での構造解析のためには、ウイルス粒子の構造を保持する必要がある。そのため、固定剤(例:パラフォルムアルデヒド)を用いてウイルス粒子を固定する方法を検討した。固定剤で固定したウイルスにCD300lfが結合することが確認でき、分解されないこともわかった。しかし、ウイルスの全体にCD300lfが結合することではないために、CD300lf結合した部位だけにフォーカスした構造解析を行なっている。また、ウイルス粒子ではなく、ウイルスのキャプシドを構成するVP1タンパク質とCD300lfの直接的な結合の解析もクライオ電子顕微鏡を用いて行ってきた。現在は、300kVクライオ電子顕微鏡でのデータ収集が終了し、Relionを用いて解析を進めている。 ヒトノロウイルスHNoV VLPの高分解能解析:AタイプとBタイプの2つの構造について、それぞれ2.8オングストローム(Aタイプ)と7.2ソングストローム(Bタイプ)の分解能で構造解析を行った。さらに高い分解能を得るために、Cold FEGおよびSelectris Xエネルギーフィルターを装着した最高性能の300kVクライオ電子顕微鏡を使用してデータ収集を行い、2.0オングストローム程度の分解能で解析ができた。
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