研究課題/領域番号 |
22K07101
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
飯笹 久 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 准教授 (80306662)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Epstein-Barr virus / APOBEC / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
Epstein-Barrウイルス(EBV)は、成人の大部分が感染している普遍的なウイルスであるが、Bリンパ腫や、EBV関連胃がん(胃がんの約10%)、上咽頭がん等の発生に関わっている。 APOBEC3(A3)ファミリーは、ヒトでは7つの遺伝子が存在し、DNAのシチジンをウリジンへ変換するDNA編集酵素である。A3ファミリーの発現は、主にI型インターフェロン(IFN)により誘導され、増殖が盛んなウイルスゲノムに変異を導入して複製を阻害する。また、宿主ゲノムやミトコンドリアゲノムへ変異を導入する可能性も、指摘されている。EBV関連胃がんは、A3ファミリーを高発現している。しかし、核に局在し宿主ゲノムに変異を挿入するA3Bの活性は、EBVのウイルスタンパク質BORF2により抑制される。一方、細胞質に局在するA3の腫瘍化における役割は明らかにされていない。即ち、A3がEBV関連上皮系腫瘍の発生を抑制するのか促進するのかは、いまだ見解が分かれている。応募者は、EBVの感染によって、胃上皮細胞でDNA編集酵素A3ファミリーの発現が誘導され、それに伴いミトコンドリアゲノムの変異が導かれることを発見した。
A3ファミリーのうち、A3A, A3Cの過剰発現がミトコンドリアゲノムの変異を誘導したが、その活性はA3Cのほうが強かった。このため、A3Cの発現量を正確にモニタリングし、高発現細胞株を分離する実験系の確立をおこなうと共に、ウイルス感染後の経時的なミトコンドリアゲノムの変異と、A3Cタンパク質発現量を測定した。その結果、両者はウイルス感染後24時間まで経時的に増加していた。次にA3C-eGFP融合タンパク質を用いて細胞内局在を解析すると、A3Cは主にミトコンドリアに局在していた。現在、相同組換えベクター作成と共に、A3C欠損株を作成し、ウイルス感染後ミトコンドリア変異の変化を調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
相同組換えベクター作成と同時に、抗A3C抗体を用いてタンパク質発現量について解析を進めている。また、これに伴いウイルス感染時のA3Cの役割について様々な解析を行なっており、近日中に論文投稿を予定している。また、HiBiTタグを挿入したタンパク質を発現させ、これを定量する実験系も樹立しており、より定量性のあるA3Cモニタリング系が樹立できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
細胞株樹立と同時に、A3C欠損株を樹立する。樹立した細胞株でウイルス感染時のミトコンドリアゲノムへの影響と、ウイルス潜伏感染、溶解感染などへの影響を調べる。データがまとまった時点で、学会発表ならびに論文投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属研究室にて、当該研究に使用できる科学研究以外の財源を確保した。しかし、獲得した財源は、2022年度内に使用するものであったことから、これを優先的に使用した。加えて、2022年度に大型機器が破損したことから、次年度に繰越した研究費を使い、新たに機器を購入することにした。
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