研究課題/領域番号 |
22K07102
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
駒 貴明 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 准教授 (00803496)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | Gag / HIV-1 / 多量体形成 / 集合 |
研究実績の概要 |
HIV-1粒子は集合過程において、骨格を形成するGag前駆体(以後Gag)が細胞膜で多量体を形成することにより起こるが、その初期過程(重要な3つのステップ:Gag二量体化、Gag膜移行、GagとgRNAの結合)は不明な点が多い。 本研究課題ではGag集合過程で認められる複合体の実態を明らかにするために、まずそれぞれ初期過程で重要な上述3つのステップが阻害される変異体(Gag二量体化不全WMAA変異体、Gagミリストイル化不全G2A変異体、gRNA結合不全NC変異体)を構築し、Gag複合体について解析を行なった。WMAAを用いたMembrane flotation assayの結果、Gagの二量体化が阻害されると膜へ行く効率が半減した。またG2A変異体を用いたCloss-link assayの結果、二量体以上の多量体形成が阻害されていた。すなわち、まず細胞質内でGag二量体化の大部分が起こり、次に膜移行・膜結合すると考えられた。WMAA変異体やG2A変異体のGagもgRNAと結合することが知られているため、gRNAは決まった時点ではなく、出芽までの過程でGagに結合すると考えられた。そこで次にNC変異体について同様の解析を実施した結果、gRNAとの結合の有無は膜移行に関与しないこと、またCloss-link assayで確認できる6量体形成までは進んでいることが明らかになった。次にNC変異体のVelocity sedimentation assayを実施した結果、10Sや80S複合体は観察されたが、500S/750S複合体の割合が顕著に低下していることが明らかとなり、gRNAとの結合は高次でのGag多量体形成に重要であることが示唆された。これまでの報告と合わせると、10S複合体、80S複合体はGagの2量体化、膜移行、gRNAとの結合に関与ないことが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度はHIV-1集合過程の特にcriticalなステップである、Gag2量体化、膜移行、gRNAとの結合について、それぞれの機能不全変異体を用いた生化学的実験により、そのGag複合体への影響について明らかにすることができた。これまでの研究でNCがGagの多量体に重要であることは知られていたが、それがGag多量体のどの段階に関与しているのかを明らかにされてはいなかった。初年度はNCとgRNAとの結合がGagの高次での多量体形成に関与することを示唆させる結果を得ることもできた。 当初の実験計画から変更はあったが、目的に変更はなく、別のアプローチでGag集合複合体の実態解明に取り組み、学会で発表可能なレベルのデータを得たことから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
早々に親株とNC変異体を用いてVelocity sedimentation assayを行い、10S~80SのGag複合体を分離する。その後、gRNAを含む場合と含まない場合での各Gag複合体の構成因子を網羅的解析に供する。 gRNAを含む場合にのみ認められる宿主因子を同定して、siRNAでノックダウンし、親株HIV-1の粒子産生量と細胞内Gag発現量を調べる。siRNAによって細胞内Gag発現量は変わらず(翻訳までは影響がない)、粒子産生量が低下した場合は選択した宿主因子が効率的なGag集合に必要であることを意味し、集合促進因子とみなす。 またこれまでのVelocity sedimentation assayの結果から、NC変異体の30S複合体の割合は少ない、または全く認められないこともある。また30S複合体からは大量のLLPS関連の因子が同定されていることから、30S複合体はgRNAとGagが結合した非膜性顆粒の可能性が高いと考えている。そこで、今後、Gag-EGFP発現細胞でGagを含む顆粒が非膜性顆粒溶解剤等により破壊されることを確認するなど、Gag集合と非膜性顆粒との関係解明も進める。 これらの解析を進めることで、粒子形成に至るGag集合複合体の実態解明を進めていく。
|