研究課題/領域番号 |
22K07102
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
駒 貴明 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 准教授 (00803496)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Gag集合 / HIV-1 / 多量体形成 / 集合 |
研究実績の概要 |
HIV-1 Gag-NCとgRNAとの結合は集合の核形成に重要な役割を持っており、Gag 6量体格子の重合には必要がないとされてきたが(Rein A. Trends Microbiol. 2019)、研究代表者は、NCとgRNAとの結合は6量体格子重合に重要であることを示した。当該年度はこの結果を裏付けるために、NCのRNA結合に重要な5つの塩基性アミノ酸をAに置換したNC-Penta変異体、NC-ZnFモチーフのH23とH44をCに置換したNC-HC変異体などを新たに追加して、生化学的解析を実施した。NC-HCとNC-Pentaはいずれも粒子産生量が著減しており、粒子中のgRNAパッケージング効率は親株を1とした際にそれぞれ平均0.07と0.19であった。変異体を発現させた細胞のvelocity sedimentation(VS)解析において、NC-Penta変異体は500S/750S複合体の割合低下に加えて、30Sと80S複合体が検出されないことが明らかとなった。これは、NC-PentaはRNA結合に寄与する塩基性アミノ酸をAに置換していることで、RNA全般と結合する能力が低下しているためであると考えられた。2021年に、500SよりS値が小さいGag複合体の大部分がリボソームと結合した単量体または二量体のGagである可能性を報告したが、今回の結果はそのWilliamsonらの結果と一致した(J Mol Biol. 2021)。また、研究代表者のプロテオソーム解析では、30Sと80S画分には大量の40S/60Sリボソームが含まれることも明らかにした。すなわち、これまでLingappaらはVS解析によって分離される10S~750Sまでの複合体はGag多量体形成の段階を表していると考えてきたが、本当は粒子形成に至るGag多量体形成は500S以降の現象であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画とは異なるが、Gag集合過程の解明につながる興味深い結果が得られたため、Gag-gRNA結合のGag集合過程の役割について、重点的に解析を行った。本研究では、Gag集合におけるNC-gRNA結合の役割は従来考えられてきたものとは異なり、Gag 6量体格子の形成に必要であることを示した。また、NC-Penta変異体のVS解析とプロテアソーム解析から、Gagは10Sから順に30S、80S、150S、500S/750S複合体を経て粒子形成に至るというLingappaらの仮説とは異なり、30Sと80S複合体は粒子形成に至らないGagが多く含まれていると考えられた。これらの成果をまとめ、第70回日本ウイルス学会学術集会と熊本大学ヒトレトロウイルス学共同研究センター 第18回ウイルス研究交流会で発表した。 以上の理由から、この研究は新たな知見を提供しており、概ね妥当に進んでいると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果を踏まえ、VS解析により分離した150S、500S/750S複合体は何量体のGagを含んでいるのかをサイズ排除クロマトグラフィー、超解像度共焦点顕微鏡や微粒子計測機器を用いて明らかにする。また当初の計画通り、Gag集合を促進する候補因子についてもプロテアソーム解析の結果をもとにスクリーニングを行う。Gag集合初期過程における非膜性顆粒の関与についての解析は、現在、条件検討に留まっているために、最終年度にはその関係性について明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画と一部変更が生じたため、消耗品費やその他の経費などに変更があり次年度使用額が生じた。翌年分の研究費とあわせて、最終年度に計画している実験(150S、500S/750S複合体に含まれるGagの多量体数測定やGag集合促進因子同定)と成果発表の費用に使用する予定である。
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