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2023 年度 実施状況報告書

E型肝炎ウイルスの感染初期と後期過程を阻害する化合物の同定と増殖抑制効果の解析

研究課題

研究課題/領域番号 22K07105
研究機関自治医科大学

研究代表者

長嶋 茂雄  自治医科大学, 医学部, 准教授 (60433116)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードE型肝炎ウイルス / レポーターウイルス / レプリコン / 生物発光タンパク質 / 粒子形成 / ウイルス放出 / 薬剤スクリーニング / ライフサイクル
研究実績の概要

これまでに、E型肝炎ウイルス(HEV)のキャプシド蛋白質にHiBiTタグを融合させた感染性の組換えHEV (HEV-HiBiT)を開発し、感染後期過程である粒子形成や放出を阻害する薬剤のスクリーニングに有用であることを報告した。また、感染中期過程であるHEV RNAの複製阻害薬の探索に有用なHEV-GLucレプリコンや感染初期過程である吸着や侵入を阻害する薬剤の探索に有用なHEV-nanoKAZも利用可能となっている。
本年度は、これらの3種類のレポーターシステムを併用した低分子化合物のスクリーニングを実施した。700種類の低分子化合物を用いたスクリーニングの結果、HEVの感染初期過程を阻害する化合物(21種類)、中期過程を阻害する化合物(3種類)、後期過程を阻害する化合物(13種類)をそれぞれ同定することができた。これらの化合物は、レポーターシステムを用いた解析において、濃度依存的な抗HEV活性を示した。また、同定された化合物のうち、1種類は初期過程と後期過程の2つの作用点を持つことが示唆された。感染後期過程を阻害する化合物の阻害機序について、HEV-HiBiTを用いて解析を行った結果、HEVの粒子形成を阻害する化合物と放出を阻害する化合物が含まれていることが明らかとなった。さらに、同定された複数の化合物では、野生型のHEVを用いた感染培養系においてもHEVの増殖抑制効果が認められた。
このように、3種類のレポーターシステムを組み合わせることにより、HEVのライフサイクルの特定のステップに作用する抗HEV候補薬を簡便かつ特異的にスクリーニングすることが可能となった。また、これらのレポーターシステムは薬剤のスクリーニングに有用であるだけでなく、いまだ解明が不十分なHEVのライフサイクルの研究にも応用が可能である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

すでに、3種類のHEVレポーターシステムを用いた低分子化合物ライブラリ (700種類) のスクリーニングが終了しており、抗HEV活性を有する複数の化合物を同定することができた。これらの化合物について、感染培養系を用いた長期間での増殖抑制効果の解析が進められており、研究は当初の計画通り進捗している。今後はリバビリンやリトナビルなど、これまでに報告されている薬剤との併用によるHEV増殖抑制効果について感染培養系を用いて検証を行う予定である。また、作用機序の異なる新規化合物の併用による増殖抑制効果についても併せて検証を行う。
HEVの粒子形成を阻害する低分子化合物を同定するためのnanoBiTシステムについても予備検討が終了し、スクリーニングへと進展させることが可能となった。

今後の研究の推進方策

HEV-nanoKAZを用いたスクリーニングにより、感染初期過程を標的とすることが明らかとなった化合物について、time-of-addition assayによりその作用機序を解析する予定である。吸着を阻害する化合物が同定された際には、HEV粒子と感染受容体との結合を阻害するか否かについても検討を行う。これにより、感染初期過程を阻害する化合物の作用機序を提示したいと考えている。
また、HEV粒子と相互作用することにより細胞内への侵入を阻害する化合物を同定するために、HEV-nanoKAZを用いたスクリーニングを実施する計画である。すでに、レポーター遺伝子 (nanoKAZ) を搭載した感染性を有する膜に覆われたHEV粒子(eHEV-nanoKAZ) と膜に覆われていないHEV粒子 (neHEV-nanoKAZ) は作出できており、スクリーニングに利用することが可能である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2023 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Chronic hepatitis E in an elderly immunocompetent patient who achieved a sustained virologic response with ribavirin treatment2023

    • 著者名/発表者名
      Takakusagi Satoshi、Takagi Hitoshi、Yamazaki Yuichi、Kosone Takashi、Nagashima Shigeo、Takahashi Masaharu、Murata Kazumoto、Okamoto Hiroaki
    • 雑誌名

      Clinical Journal of Gastroenterology

      巻: 16 ページ: 206~215

    • DOI

      10.1007/s12328-022-01733-2

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Infection Dynamics and Genomic Mutations of Hepatitis E Virus in Naturally Infected Pigs on a Farrow-to-Finish Farm in Japan: A Survey from 2012 to 20212023

    • 著者名/発表者名
      Takahashi Masaharu、Kunita Satoshi、Nishizawa Tsutomu、Ohnishi Hiroshi、Primadharsini Putu Prathiwi、Nagashima Shigeo、Murata Kazumoto、Okamoto Hiroaki
    • 雑誌名

      Viruses

      巻: 15 ページ: 1516

    • DOI

      10.3390/v15071516

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Development of a HiBiT-tagged reporter hepatitis E virus and its utility as an antiviral drug screening platform2023

    • 著者名/発表者名
      Nagashima Shigeo、Primadharsini Putu Prathiwi、Nishiyama Takashi、Takahashi Masaharu、Murata Kazumoto、Okamoto Hiroaki
    • 雑誌名

      Journal of Virology

      巻: 97 ページ: e00508-23

    • DOI

      10.1128/jvi.00508-23

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Three Distinct Reporter Systems of Hepatitis E Virus and Their Utility as Drug Screening Platforms2023

    • 著者名/発表者名
      Primadharsini Putu Prathiwi、Nagashima Shigeo、Nishiyama Takashi、Okamoto Hiroaki
    • 雑誌名

      Viruses

      巻: 15 ページ: 1989

    • DOI

      10.3390/v15101989

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 3種類のE型肝炎ウイルス(HEV)レポーターシステムを利用した抗HEV薬スクリーニングの有用性の評価2023

    • 著者名/発表者名
      長嶋 茂雄、プトゥ プラティウィ プリマダルシニ、高橋 雅春、村田 一素、岡本 宏明
    • 学会等名
      第70回日本ウイルス学会学術集会
  • [備考] 自治医科大学 医学部 感染・免疫学講座ウイルス学部門 ホームページ

    • URL

      https://www.jichi.ac.jp/virology/

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公開日: 2024-12-25  

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