研究実績の概要 |
OSBPのリガンド結合ドメインの構造を決定し、これまでに同定していたOSBP阻害剤T-00127-HEV2の結合に影響しうるアミノ酸残基置換(L590W, M446W)を同定した。L590W置換は、リガンド結合ドメインの発現レベルを上昇させることで、T-00127-HEV2およびその他のOSBP阻害剤に対して見かけ上の耐性を与えることが明らかになった。一方、M446W置換は、T-00127-HEV2のリガンド結合ドメインへの結合を阻害することが明らかにされた。M446W置換はT-00127-HEV2に特異的な耐性を与えたことから、M446WのT-00127-HEV2への相互作用はこの阻害剤に特異的なものであることが示唆された。このことを利用して、M446W置換を持ったOSBP変異体を高発現させることで、ウイルス複製を促進するために必要なOSBPドメインを同定することができる測定系を作成した。この系を用いて解析したところ、OSBPの脂質輸送活性に必要であるPHドメインとリガンド結合ドメインについてはウイルス複製の促進に必要であることが示された。一方、OSBPを小胞体に引き止めるためのVAPA/VAPBへの結合に必要なFFATモチーフや2量体化に必要な領域はウイルス複製を促進するためには必要でないことが明らかにされた。これらの結果から、ウイルス複製においては、OSBPはVAPA/VAPBを介して小胞体に結合することは必要ではなく、ウイルス側の因子やそれに伴うPI4Pの産生がOSBPのウイルス複製膜への局在および活性に必要とされることが示唆された。
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