研究課題/領域番号 |
22K07108
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 大志 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (80711712)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ムンプスウイルス / パラミクソウイルス / 液-液相分離 / 封入体 / RNA合成 |
研究実績の概要 |
液-液相分離(LLPS)と呼ばれる分子濃縮が、細胞の様々な生理機能に関わっていることが近年明らかになってきた。LLPSは、必要なタンパク質や核酸を選択的かつ局所的に濃縮することで、それぞれの化学反応を効率的に進める働きがある。ウイルスもまた、細胞内で効率よく増殖するために、LLPSを利用すると考えられるが、まだ十分に研究は進んでいない。本申請課題では、医学・獣医学上重要な病原体が数多く含まれるパラミクソウイルスの増殖機構をLLPSによる分子濃縮の観点から明らかにし、パラミクソウイルス感染症の治療薬開発につなげることを目的とする。 今年度は代表的なパラミクソウイルスであるムンプスウイルス(MuV)の増殖過程の中で分子濃縮が要求される粒子形成過程において、関与する宿主因子を探索した。ビオチンリガーゼであるTurboIDをN末端ドメインとC末端ドメインに分割し、MuVの2つの膜タンパク質であるFタンパク質およびHNタンパク質の細胞質領域に導入した。両タンパク質を発現させた細胞にビオチンを添加し、その後ビオチン化タンパク質をストレプトアビジンで精製・濃縮し、質量分析によって同定した。その中から、SNARE複合体を構成するUSE1に着目し、MuV増殖における役割を解析した。USE1はFタンパク質とERにおいて相互作用した。さらにsiRNAを用いてUSE1をノックダウンした細胞ではFタンパク質の発現量の低下や、正確な糖鎖付加が起きなかったことから、USE1はMuVのFタンパク質の安定性や糖鎖修飾への関与を通して、MuVの増殖に重要な宿主因子であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者が年度途中(9月)に国立感染症研究所から東京大学に異動し、研究室のセットアップに時間を要したため、予定よりも遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はその他の増殖過程についても同様に、ビオチンリガーゼを用いた近接依存性標識法によって、関与する宿主因子の探索を実施する。得られた因子の中からLLPSの中心的役割を果たす因子を同定すると共に、その因子によってもたらされる反応環境の意義を解析することで、各増殖過程の分子メカニズムを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度途中の研究代表者の移動により、一部予定していた研究が実施できなかった。その分の研究費については、次年度に繰り越して使用する。また年度末納品等にかかる支払いが令和5年4月1日以降となったため、一部支出分については次年度の実支出額に計上予定である。 繰越分のための遅れている研究計画については早急に実施する予定である。
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