研究課題/領域番号 |
22K07119
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
吉川 宗一郎 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10549926)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 神経免疫 / アレルギー / 精神的ストレス / 交感神経 / マクロファージ / 好塩基球 / 貪食 |
研究実績の概要 |
心理性ストレスは様々な疾患と関連があり、がんや感染症、自己免疫疾患、アレルギーなどを誘発、増悪させる因子として知られている。これまで、こうした現象には自律神経が関与すると考えられてきたものの、どのような分子メカニズムによって誘導されているのかは不明瞭なままであった。研究代表者は、これまでにアトピー性皮膚炎(IgE-CAI)の発症メカニズムの解析に長年携わってきた。これらの研究成果により、IgE-CAIでは好塩基球によりアレルギーが引き起こされ、これがM2マクロファージによって抑制されることを見出した。最近我々は、独自の慢性心理ストレスモデルを開発し、IgE-CAIが心理ストレスによって悪化することを発見した。これまでの実験から、このストレス誘発性アレルギー増悪反応は交感神経依存的な現象であり、さらには、ストレスによってM2マクロファージが何らかの機能異常をきたしている事がわかってきた。マクロファージの機能異常をもたらす因子はβ2アドレナリン受容体を介するシグナルが関わっていることも突き止めた。 当該年度では、マクロファージがどのような機能が異常になっていることでアレルギーが悪化しているのかを解析することにした。ストレスマウス、コントロールマウスのM2マクロファージを単離し、RNA-seqで両群間の遺伝子発現変化を網羅的に解析したところ、死細胞やデブリ除去などに関わる遺伝子の発現が優位に低下していることを発見した。また、アレルギー炎症局所において、上記分子がM2マクロファージで低下していることも確認できた。さらに、Adrb2アゴニストで刺激しながら骨髄マクロファージを誘導すると、上記の遺伝子、分子が減弱することも分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、ストレスでアレルギーが悪化するメカニズムの一端として、マクロファージのどのような機能が異常となるのかを解明し、そのメカニズムとその分子などを同定することである。 実際に、どの候補遺伝子が最も重要となっているのかはまだ全く分かっていないが、当該年度の解析で想定しているよりも早く、すでにその候補となる遺伝子や分子候補を絞ることができたため、研究は順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、候補となる遺伝子が欠損、または抑制させることでアレルギーが増悪するのか、または、ストレスを誘導したマウスに上記遺伝子や分子を補うとアレルギーの増悪が緩和するかを検証する。 現在、ストレスマクロファージで最も発現が低下している分子のリコンビナントタンパク質を作製している。次年度では、このタンパク質と阻害剤を用いて、ストレスでマクロファージの機能が異常となる原因となる分子の特定を行う。さらに、in vitroでストレスマクロファージと類似した細胞を誘導することもできているため、これを駆使して、どのようなメカニズムやシグナル調節で貪食関連遺伝子が低下しているかを解析する予定である。
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