研究課題/領域番号 |
22K07120
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
森本 純子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (20451396)
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研究分担者 |
松本 満 徳島大学, 先端酵素学研究所, 教授 (60221595) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Aire / mTEC / Treg / CTLA-4 / DC / TRA |
研究実績の概要 |
制御性T細胞(Treg)の産生不全は自己免疫疾患の発症に深く関与している。胸腺では胸腺髄質上皮細胞(mTEC)が組織特異的自己抗原(TRA; tissue restricted antigen)を産生し提示することでTregを誘導する。mTECが発現するTRAは胸腺内に存在する樹状細胞(DC)へと転移することでDCによる抗原提示によってもTregが誘導される(抗原転移)。しかしながらどのようなメカニズムで抗原が転移するのか、さらにはmTECとDCにより誘導されるTregには機能的にどのような違いがあるのかは不明である。令和4年度は、この点を明らかにすべく解析を行った。その結果、mTECの抗原提示により誘導されるTregとDCの抗原提示により誘導されるTregは機能的に異なること、さらには胸腺内Treg誘導にはDCと比べてmTECがより影響を与えていることを明らかにした。またDCによるmTECの貪食が抗原転移のメカニズムの一つであることを明らかにし報告した(Morimoto J, et. al., Journal of Immunology 2023 in press)。他方で、mTECに特異的に発現する転写因子Aireの変異はヒトにおいては自己免疫性多腺性内分泌疾患Ⅰ型を誘発し、マウスではその欠損はヒトと同様に様々な自己免疫疾患を引き起こす。我々はこれまでにAire-KOマウスを用いてAire欠損により誘発される胸腺内Treg産生の低下は、mTECが異所性に発現するCTLA-4分子が一部関与していることを明らかにし報告してきた。令和4年度はmTEC上に発現するCTLA-4が自己免疫病態の発症にどの程度寄与するのかを検討するため、CTLA-4 conditional KOマウスを入手し、Aire欠損状態でかつ胸腺上皮細胞特異的にCTLA-4を欠失するマウスの作製を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度はmTECとDCのそれぞれの抗原提示により胸腺内で誘導されたTregについて比較検討を行った。我々はジフテリアトキシンの投与により時期特異的にmTECを除去できるマウス(Aire/DTR-KI)およびDCを除去できるマウス(CD11c/DTR-KI)を使用することで、mTECおよびDCの抗原提示により誘導されるTregの比較を行なった。その結果、mTECおよびDCをそれぞれを除去した場合、胸腺内におけるTreg数は有意に低下したが、mTECを除去した場合でより強い影響を認めた。mTECとDCを両方除去した場合では、Treg誘導はほぼ完全に阻害されていた。GITR, CTLA-4,FR4といったTregマーカーとなる分子の発現およびそれらの遺伝子のメチル化状態を解析したところ、mTECを除去した場合でより強い影響を認めた。さらには長期的にmTECとDCをそれぞれ除去したところ、標的臓器が異なる自己免疫病態を示した。これらの結果は、胸腺内Treg誘導においてmTECとDCは協調的に作用するが、機能的に異なるTregを誘導することで自己寛容の成立に寄与していることが示された(Morimoto J, et. al., Journal of Immunology 2023 in press)。さらにCTLA-4 conditional KO マウスを入手し、Foxn1-CreマウスさらにはAire-KO マウスと交配することで、Aire欠損状態でかつ胸腺上皮細胞特異的にCTLA-4を欠失するマウスの作製が完了した。よって令和4年度に目標としていた研究計画はほぼ遂行できたので、研究進捗状況としては概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
我々はこれまでに、Aire欠損状態でmTEC上に異所性に発現するCTLA-4がAire欠損によるTerg誘導低下の一つの原因となることを見出し報告してきた(Morimoto J, et al., Cell Reports 2022)。令和4年度はmTEC上に発現するCTLA-4が自己免疫病態の発症にどの程度寄与するのかを検討するため、CTLA-4 conditional KOマウスを入手しAire欠損状態でかつ胸腺上皮細胞特異的にCTLA-4を欠失するマウスの作製を行った(Aire-KO/Foxn1-Cre/CTLA-4 floxマウス)。令和5年度以降はこのマウスを用いて以下の解析を行う予定である。1) Aire-KO/Foxn1-Cre/CTLA-4 floxマウスで胸腺内Treg産生が回復するかどうかを検討する。2)Aire-KOマウスでは主に腺組織において炎症性細胞の浸潤を認める。そこでAire-KO/Foxn1-Cre/CTLA-4 floxマウスにおける自己免疫病態をAire-KOマウスと比較することで、mTEC上のCTLA-4と自己免疫病態発症との関連性を明らかにする。3)Aire-KOおよびAire-KO/Foxn1-Cre/CTLA-4 floxマウスの胸腺内Tregを用いてトランスクリプトーム解析を行い、異所性に発現するCTLA-4がTregに質的変化をもたらしているかどうかを明らかにする。4)Aire-KOマウスにおいてmTECの多様性は野生型のそれとは大きく異なる。そこでmTECにおける異所性のCTLA-4の発現がmTECの分化やTRA発現レベルに影響を及ぼすか否かをAire-KO/Foxn1-Cre/CTLA-4 floxマウスのmTECを用い、single-cellレベルでのトランスクリプトーム解析を行うことで明らかにする。
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