私達はウイルス感染模倣刺激時下でI型IFN産生細胞だけでなくI型IFNを産生しない細胞が存在し、この非産生細胞ではDkkファミリーが高発現することを見出した。そこで私達はDkkファミリーによるI型IFN産生抑制機構の分子的詳細と作用機序を明らかにすることを目的に本研究を実施した。 まずDkkによるI型IFN産生抑制に関与する下流シグナル経路の探索を実施した。DkkはWntシグナル経路のアンタゴニストとして知られていることから、Wntシグナル阻害剤および活性化剤の適用によってI型IFN発現に影響があるかどうか調べたところ、DkkがWntシグナル経路を介してI型IFN発現を制御するという仮説とは異なる結果が得られ、Dkkが他の経路を介する可能性が示唆された。近年の研究でDkkはWnt受容体とは別の受容体に結合しシグナルを伝達することが明らかになっている。そこでこの受容体に対するsiRNAの導入、およびDkkの受容体結合部位を欠如した変異体を構築し解析したが、I型IFN産生に影響は見られなかった。現在はDkkと結合する因子を見つけることで新規経路の探索を検討している。 このような下流シグナル経路探索に加えて、I型 IFN発現細胞および非発現細胞を決定する最上流における遺伝子制御機構の解明を目指すため、「先進ゲノム支援」のご支援のもとシングルセルRNAseqによって遺伝子発現プロファイルの解析を実施している。 また、これまでウイルス感染模倣刺激によってI型IFN産生調節効果を検討してきたが、実際のウイルスをDKK欠損細胞に感染させることでもI型IFN産生量は増加しウイルス力価が低下することを見出した。今後はDKK欠損マウス個体を用いてウイルス抵抗性の影響を検討する。 本研究代表者の機関転出に伴い中途終了を申請することになった。今後の解析は異動前の研究室において続けられる予定である。
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