本研究課題は妊娠時における免疫学的寛容機構を担うマクロファージの機能を解明することである。昨年は当該マクロファージを発見する事ができ、さらにはそれを生体から除去することによって、妊孕性が破綻することを突き止めた。 さらに、今年度においては、その妊孕性の破綻は免疫寛容が成立できないことによるものが明らかとなり、当該細胞においてその機能に必要な分子の同定も行うことができた。従来の不妊治療ではそのメカニズムが不明な部分が多く残されているが、当該細胞がそのメカニズムの本体に強く関与していることを示すデータを得ており、不妊治療の新規標的となりうる。また、自己免疫疾患に関与する遺伝子を多数発現しているため、妊娠や自己免疫疾患、さらには癌のような自己、非自己の見分けが曖昧になるような疾患にも関与する可能性がある。それに加え、当該細胞の維持機構が明らかになりつつあり、体外での培養を目指し条件検討を行なっている。体外で大量に培養出来れば、妊婦もしくは妊娠を希望する女性から前駆細胞などを回収し、大幅に増やしたあとに移入するなどの新規治療を考えることが出来る。さらに、シングルセルRNA-seqを子宮の免疫細胞を用いて行なったことにより、前駆細胞を維持するfeeder cellsについても同定が進みつつあり、feeder cellsの機能を明らかにすることによって相乗的に妊娠時の免疫システムの理解が進展すると考えられる。
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