研究課題/領域番号 |
22K07139
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
近藤 元就 東邦大学, 医学部, 教授 (20594344)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / 胸腺細胞 |
研究実績の概要 |
Special AT-rich sequence binding protein-1(SATB1)はクロマチン構造調節タンパク質で、多くの遺伝子の発現調節に関与している。我々はこれまでにSATB1がT細胞の胸腺における成熟や末梢でのエフェクター機能に不可欠であることを明らかにしてきた。そして、T細胞の機能に関わるSATB1がミトコンドリアDNAに結合するタンパク質である mitochondrial transcription factor A(TFAM)の発現調節に関与する事を見出した。SATB1を欠損するT細胞で認められる機能障害の責任分子がTFAMなのか、そうならばTFAMとミトコンドリアの具体的な作用はどのようなものかを明らかにすることがこの研究の目的である。
T細胞特異的にTFAMを欠損するマウス(TFAM_cKO)を作製した。このマウスの胸腺では、胸腺細胞の総数が野生型マウスに比べ1/3程度に減少していることが判明した。CD4とCD8の発現を指標にした成熟度について解析したところ、二重陽性(DP)細胞からCD4あるいはCD8の単独陽性(SP)への成熟は野生型マウスと概ね同様の集団形成(集団割合)であった。また、CD24やTCRβを指標にした場合でも同様の割合であったため、TFAMは細胞成熟の進行度に大きな寄与をしていないが未熟細胞の増殖に関与する事が示唆された。
SATB1欠損下でTFAMを発現させる目的でSATB1_cKOマウスとTFAMトランスジェニックマウスとを交配した(SATB1_cKO_TgTFAMマウス)。このマウスの胸腺細胞を解析したところ、SATB1_cKOマウスの特徴であるDP細胞からCD4あるいはCD8SP細胞への分化が障害されていた。SATB1_cKOマウスでの胸腺細胞の減少はSATB1_cKO_TgTFAMマウスでは軽減されていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
TFAM_cKOマウスやSATB_cKO_TgTFAMマウスの交配に時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
SATB1が果たしているT細胞機能のうちTFAMがどの機能を担うかを明らかにするため、SATB1_cKO_TgTFAMマウスの解析を進める。T細胞の生活環における胸腺と末梢でのそれぞれのステージを想定するが、まず胸腺内での成熟過程における細胞増殖や細胞数維持、さらにDP細胞からCD4あるいはCD8のSP細胞への成熟進行にTFAMがどのような役割を果たすかについて明らかにする。
末梢での恒常性維持等に対するTFAMの寄与についても具体化していく。SATB1_cKOマウスのT細胞は抗原刺激に対して低応答であるが、細胞周期に関する分子に着目して解析していく。T細胞は抗原刺激に応答して多くの遺伝子を発現するが、サイトカイン遺伝子に焦点をあてて解析する。SATB1やTFAMがそれらの遺伝子の発現に寄与するかについて検討する。
SATB1_cKOマウスやTFAM_cKOマウスを併用しながら、SATB1-TFAM-ミトコンドリア軸がもたらすT細胞の機能解明に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の予算使用はほぼ計画通りで未使用額は少額であった。次年度も事前の計画に沿って活動し、研究費を試薬購入や動物飼育経費にあてる。
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