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2023 年度 実施状況報告書

EGFR変異肺がんの薬剤耐性に関わるエピジェネティック制御因子の探索

研究課題

研究課題/領域番号 22K07146
研究機関金沢大学

研究代表者

石村 昭彦  金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (80375261)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードeエピジェネティクス / 薬剤耐性 / EGF受容体変異肺がん細胞 / オシメルチニブ
研究実績の概要

全肺がんの大半を占める非小細胞肺がんでは、(特にアジア人において)上皮成長因子受容体(EGFR)に高頻度な遺伝子変異が観察される。そして変異によって誘導される慢性的なEGFRシグナルの活性化が、腫瘍細胞の増殖や生存に重要であると考えられている。このようなEGFR変異肺がん患者に対しては、EGFR特異的なチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)のひとつ、オシメルチニブによる分子標的薬治療が有効である。ところが、治療開始から1~数年以内に耐性がんとして必ず再発するのが大きな課題である。
研究代表者は、この耐性獲得メカニズムにエピジェネティック制御因子が重要であると考え、目的特化型CRISPR/Cas9スクリーニングによって候補遺伝子の同定を試みた。一方、マイクロアレイ解析によってオシメルチニブ初期応答に関わるエピジェネティック制御因子のスクリーニングを行った。その結果、研究代表者はヒストンアセチル化酵素Xと、その結合タンパク質Yを新規の薬剤耐性に関わる候補因子として同定することに成功した。次にEGFR変異肺がん細胞株を用いたノックダウン実験を行った。その結果、どちらの遺伝子の発現抑制させても薬剤耐性能が有意に上昇することが観察され、また結合タンパク質Yはオシメルチニブ処理後数時間以内に誘導していた。従って、注目しているヒストンアセチル化酵素複合体は、オシメルチニブ初期応答因子として薬効に対して重要な役目を担っている可能性が示唆された。研究代表者は、このヒストンアセチル化酵素複合体が制御する標的遺伝子候補を複数見出しており、今後、分子レベルでオシメルチニブ耐性獲得における分子基盤の一端を明らかにすると同時に、新たな「耐性克服」あるいは「耐性回避」戦略の確立を目指す。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

EGFR特異的なチロシンキナーゼ阻害剤のひとつ、オシメルチニブは、対象患者に対して劇的な治療効果を得ることができるが、数年以内に「薬剤耐性がん」として必ず再発するのが大きな課題である。私たちは、この耐性獲得メカニズムにエピジェネティック制御因子が重要であると考え、標的をエピジェネティック制御因子(120種類のヒストン・DNA修飾関連酵素および共役因子)に絞った「目的特化型CRISPR/Cas9スクリーニング」を試みた。その結果、ヒストンアセチル化酵素HBO1の同定に成功した。HBO1特異的shRNAを用いてノックダウン実験を行った結果、EGFR変異肺がん細胞HCC827の薬剤耐性能が著しく上昇した。一方、マイクロアレイ解析によってオシメルチニブ処理後に誘導するエピジェネティック制御因子のスクリーニングを行った結果、HBO1結合タンパク質ING4を含む複数の候補遺伝子の同定に成功した。ING4ノックダウン実験の結果、HBO1ノックダウン実験結果と同様に薬剤抵抗コロニーの出現が有意に上昇した。ING4は、ヒストンH3のメチル化修飾リジン残基(H3K4me3)に結合する「エピジェネティックReaderタンパク質」のひとつとして知られているが、研究代表者は、HBO1-ING4複合体がオシメルチニブの奏効性に極めて重要な役割を担っていると考え、ING4ノックダウン細胞を用いたマイクロアレイ解析を行った。その結果、ING4の標的遺伝子候補を複数同定することに成功し、オシメルチニブ処理後、HBO1-ING4複合体の分子基盤の一端が明らかになりつつある。

今後の研究の推進方策

これまでの研究成果より、HBO1-ING4複合体が肺がん細胞のオシメルチニブ感受性を制御し、その破綻が薬剤耐性獲得に関わる可能性が強く示唆されている。また2023年度に行ったマイクロアレイ解析の結果、ING4ノックダウンで有意に発現が低下する候補遺伝子を複数同定することに成功し、そのうち幾つかは定量PCR法によって実際の発現低下を確認済みである。今後、クロマチン免疫沈降法によって、これら候補遺伝子がING4(およびHBO1)の直接的な発現制御を受けるかどうかを検証していく。また、マイクロアレイ解析によってオシメルチニブ処理後に誘導するエピジェネティック制御因子のスクリーニングを行った結果、ING4以外の複数のエピジェネティック制御因子の同定に成功した。そのうち因子AはING4と同様にオシメルチニブ処理後に著しい発現増加が観察され、さらに因子Aに対する分子標的薬はオシメルチニブとの強い併用効果が認められた。今後、研究代表者は、これまでのプロジェクトと平行して因子Aとオシメルチニブ間の分子的関連性を明らかにしていく。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] ASH2L, a COMPASS core subunit, is involved in the cell invasion and migration of triple-negative breast cancer cells through the epigenetic control of histone H3 lysine 4 methylation2023

    • 著者名/発表者名
      Batbayar Gerelsuren、Ishimura Akihiko、Lyu Hanbing、Wanna-udom Sasithorn、Meguro-Horike Makiko、Terashima Minoru、Horike Shin-ichi、Takino Takahisa、Suzuki Takeshi
    • 雑誌名

      Biochemical and Biophysical Research Communications

      巻: 669 ページ: 19~29

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2023.05.061

    • 査読あり
  • [学会発表] ASH2L plays a role in triple-negative breast cancer cells through the control of histone H3 lysine 4 methylation.2023

    • 著者名/発表者名
      石村昭彦、寺島農、滝野 隆久、鈴木健之
    • 学会等名
      第82回日本癌学会学術総会
  • [学会発表] COMPASS複合体サブユニットASH2Lの悪性化乳がんにおける役割2023

    • 著者名/発表者名
      石村昭彦、Gerelsuren Batbayar、Hanbing Lyu、Sasithorn Wanna-udom、目黒牧子、寺島農、堀家慎一、筒井 秀和、仁宮 一章、滝野 隆久、鈴木健之
    • 学会等名
      第46回日本分子生物学年会

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公開日: 2024-12-25  

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