研究課題/領域番号 |
22K07147
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
寺島 農 金沢大学, がん進展制御研究所, 博士研究員 (80507434)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ヒストンメチル化修飾 / 上皮間葉転換 / EMT / EMT転写因子 / DNA修復 / 薬剤抵抗性 / がん細胞の悪性化 |
研究実績の概要 |
申請者は、細胞の特性に関連するエピジェネティックドメインを手がかりに、新たな上皮間葉(EMT)関連転写因子を見いだした。EMTはがん細胞の悪性度を示す指標の一つとして知られている。そこで本研究では、がん細胞の悪性化過程におけるこの転写因子の役割を理解することを目的に研究を行っている。 まずはこの転写因子がEMTに及ぼす影響を調べた。EMTが誘導されるモデルがん細胞において、この転写因子を過剰発現させると、EMT様の形態変化と遺伝子発現プログラムの誘導が観察された。また、この転写因子のノックダウンにより、EMTの進行が阻害された。これにより、この転写因子がEMT過程に関与することが示唆された。さらにこのタンパク質の機能ドメインを欠損させた解析から、他のタンパク質と相互作用するドメインがEMTを誘導するのに必須であることが示唆された。免疫沈降後の結合タンパク質を質量分析すると、この転写因子がファミリータンパク質と相互作用することが明らかになった。ファミリータンパク質はEMTに対して抑制的に作用することから、この転写因子は相互作用によりファミリータンパク質のEMT抑制作用を阻害し、EMTを誘導することが示唆された。 この転写因子はDNA修復関連因子群とも相互作用することから、DNA修復経路へ関与が示唆された。抗がん剤であるエトポシド処理によりDNA二本鎖切断を誘発すると、この転写因子を過剰発現させたがん細胞は、修復レベルがより高く、エトポシドに対して抵抗性を示した。逆にノックダウンしたがん細胞は修復レベルがより低く、エトポシドに対して感受性を示した。以上より、この転写因子はDNA二本鎖切断の修復過程に関わり、抗がん剤に対する抵抗性に寄与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この転写因子のEMTにおける役割と、DNA修復経路への関与を明らかにすることをある程度達成できたから。
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今後の研究の推進方策 |
この転写因子がどのようにしてファミリータンパク質のEMT抑制作用を阻害するのか、そのメカニズムを明らかにする。さらに、この転写因子がどのようにしてDNA修復経路に関与するのか、そのメカニズムを明らかにする。
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