研究実績の概要 |
乳癌におけるアンドロゲン受容体(AR)シグナルによる腫瘍免疫制御機構の詳細を明らかにするべく①In-silico解析によるAR下流の候補因子の抽出、②候補因子と乳癌組織内免疫細胞組成との関連性の検証、③In-vitro解析による候補因子の免疫学的機能の検証を行った。①以前同定した乳癌における複数のAR依存性分泌蛋白のうちAZGP1にコードされるAlpha-2-glycoprotein 1, zinc-binding (ZAG)に着目して解析を進めた。大規模乳癌コホート由来遺伝子発現データを用いた遺伝子セット濃縮解析(GSEA)とCIBERSORTアルゴリズムを用いた推定腫瘍内免疫細胞組成解析の結果、AZGP1発現は乳癌において免疫抑制的フェノタイプ、特にMacrophage(Mφ) M1, NK activated, T cell CD4 memory activated, T cell CD8の腫瘍浸潤が少ないこと関連した。②乳癌組織においてIHC評価でのZAG発現はflow cytometry評価でのMφ, CD16+Monocyte, Myeloid-derived suppressor cellsの腫瘍浸潤が少ないことと相関した。③上記の結果から、ZAGの一次票的をMφと想定、ヒトPBMC由来Mφ初代培養細胞に対するZAGの作用を検証したところ、ZAGはM1分化モデル系においてM1分化マーカー(CD80),M2分化マーカー(CD163, MRC1)及びHLA Class1,2発現を、M2分化モデルにおいてM2分化マーカー発現を低下させた。乳癌においてAZGP1/ZAG発現は免疫抑制的フェノタイプ、特にMφの腫瘍内浸潤が少ないことと関連し、in-vitro解析でMφの分化とHLA発現に影響したことからこれを新規免疫制御因子として注目し、さらなる機能解析を行いたい。
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