研究実績の概要 |
腫瘍免疫を応用した治療薬である免疫チェックポイント阻害剤(ICI)はホルモン非感受性乳癌の一部に高い効果を示す一方、乳癌の大部分を占めるホルモン感受性乳癌に対しては効果を示さず、ホルモンシグナルに起因する何らかの免疫制御機構の存在が示唆される。 本研究は乳癌に発現するホルモンレセプターの一つであるアンドロゲンレセプター(AR)の腫瘍免疫における機能とそのメカニズムを明らかにし、治療開発に結びつけることを目的としている。 前年度までに我々はAR発現が乳癌において免疫抑制的な腫瘍微小環境と相関することを確認し、研究成果を報告した[Hanamura T.,et al., Breast Can Res. 2023]。続いてARシグナルによる免疫制御機構のメディエイターとしてAR依存性分泌蛋白;Alpha-2-glycoprotein 1, zinc-binding ;ZAG(遺伝子名AZGP1)に注目し、大規模乳癌コホート由来遺伝子発現プロファイルデータセットを用いた解析、マルチカラーフローサイトメトリーを用いた乳癌組織内免疫細胞組成の解析、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)由来Macrophage初代培養細胞を用いたIn-vitro解析を行った。一連の解析結果からZAGが乳癌組織内において免疫制御メカニズムの一つとして働いていることを強く示す結果が得られ、研究成果を報告した。[Hanamura T, et al., Cancer immunology immunotherapy, 2024]。 我々の研究成果はホルモンレセプターシグナルに関連した乳癌特有の免疫制御メカニズムにZAGが関与している可能性を示すものであり、腫瘍免疫を応用した新規治療の開発に対し一定の示唆を与えるものである。
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