研究課題
従来の変異シグナチャーの拡張(A-3)これまでに開発した3~7塩基パターンの癌変異中の濃縮を求めるプログラムによってTCGA(The Cancer Genome Atlas)からアクセス可能な全33癌種について全癌変異解析を行ない,各癌種毎に濃縮されたモチーフを明らかにした.さらにこれらのモチーフについてREBASE(Restriction Enzyme Database)と対応させ,その微生物の持つ制限酵素が変異源となり得る微生物種をリストした.このリストをBIC(database for the transcriptional landscape of bacteria in cancer)の各癌種毎に存在する微生物腫と統合することによって18癌種について延べ94微生物種が変異源候補として挙げられた.胃癌変異源候補PabI(A-7)これまでの研究から胃癌変異源候補としてあがっているピロリ菌の持つ制限酵素PabIについて,ピロリ菌のPabIの有無とホストであるヒトの胃癌発癌のリスクをHpGP株(Helicobacter pylori Genome Project)とNCBI登録株について解析したところ,ヨーロッパ株のピロリ菌感染者においてオッズ比2.5(p=0.00036)が得られた.さらに,解析対象をヨーロッパ株のあるsubpopulationに限定するとオッズ比5.0(p=0.017)が得られ,ピロリ菌のPabIと胃癌発癌の強い関連が示唆された.現在,これらの結果について論文にまとめ,Nature Biotechnologyに投稿中である.
2: おおむね順調に進展している
昨年度開発した新規癌変異シグナチャー解析手法を用いてTCGAの癌変異データを解析し,各癌種特異的な3~8塩基パターンを探索し制限酵素データベースREBASEに登録のある生物種-モチーフデータと対応させたところ,のべ103属の細菌に関連する265のシグナチャーが見つかった.さらにRNA-seq based メタゲノム解析データべースBICの各癌種毎に存在する微生物腫と統合することによって18癌種について延べ94微生物種を変異源候補として挙げた.また,ピロリ菌の持つPabI制限酵素による胃癌変異導入仮説をより強固なものにするために,ピロリ菌側のPabIの有無とホストであるヒトの胃癌発癌の相関解析が必要となった.そこで申請時は計画されていなかったがHpGPとNCBI登録ピロリ菌株について,PabIの有無と胃癌発癌のリスク解析をしたところ,ヨーロッパ株のピロリ菌感染者においてオッズ比2.5(p=0.00036)が得られた.さらに,解析対象をヨーロッパ株のあるsubpopulationに限定するとオッズ比5.0(p=0.017)が得られ,ピロリ菌のPabIと胃癌発癌の強い関連が示唆された.一方,大腸菌を用いた変異導入実験は,予定通りPabI変異生成系を改良し,変異導入実験,解析を行うことが出来たが,思うように変異が得られなかった.これに関しては変異解析手法を改良する,ヒト培養細胞での長期変異導入実験を行う等の改善や別のアプローチが必要である.
ピロリ菌PabI制限酵素による胃癌変異導入仮説をより確かなものにするにはPabIによって実際にPabI認識配列関連変異が導入されていることを示す必要があるが,これまでの大腸菌を用いた変異導入実験では思うように結果が得られていない.そこで,ピロリ菌を多数株,経時的にヒトからサンプリングしたケースをデータベースから抽出し,そのゲノム比較によってピロリ菌におけるPabI認識配列関連変異導入を評価する.さらに,変異導入実験についてはDuplex sequencing技術の導入によって変異検出感度を向上させる.同時に,ヒト胃上皮細胞でのPabI発現系の構築を行い,こちらのラインでも変異検出を試みる.
既存の試薬類や器具類を利用できたので次年度使用額が生じた。次年度は大腸菌や培養細胞を利用した実験が予定されており,多量の消耗品が必要となるのでそちらに利用予定である.
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