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2022 年度 実施状況報告書

胃がん・大腸がんにおいて変異SMAD4がもたらすエピゲノム制御異常と病態への関与

研究課題

研究課題/領域番号 22K07165
研究機関東京大学

研究代表者

鯉沼 代造  東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (80375071)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード胃がん / 大腸がん / TGF-β / SMAD4 / ChIP-seq / 変異
研究実績の概要

本研究課題では体細胞変異の頻度が高い遺伝子SMAD4に注目し、その変異がもたらす分子機能の変化について超並列シーケンサーを用いたゲノム結合部位の解析などを通して、俯瞰的立場から明らかにすることを目的としている。これによりSMAD4の機能喪失及び機能獲得の両側面について癌の進展との関係を見出すことを期待している。
SMAD4のホットスポット変異のある細胞株でのChIP-seqデータの解析から、変異SMAD4のゲノムへの結合は消失せずある程度保持されていることが明らかになった。免疫沈降実験の結果からSMAD3やSMAD2との複合体形成は一部損なわれていることが示唆されていたことから、変異SMAD4がゲノム上に留まることで転写活性への影響を生じることが考えられた。さらに野生型SMAD4を発現するがん細胞株でのChIP-seqデータとの比較では、変異SMAD4結合部位の多くが野生型の結合部位と一致していた。RNA-seqによる変異SMAD4ノックダウンの遺伝子発現への影響が示唆されたためCRISPR/Cas9により新たに安定的なSMAD4発現抑制細胞を樹立し、エピゲノム状態の変化・特に転写活性化状態の変化について解析するためChIP-seqデータを取得した。
一方で大腸がん細胞で変異SMAD4発現抑制細胞を得る実験やマウス担がんモデルの樹立を試みたものの評価可能な細胞・モデルは得られなかった。
以上の結果を踏まえて今後は胃がん細胞での転写制御機構・特にエピゲノム変化との関係に注目して変異SMAD4の機能の解析を続けるとともに、下流遺伝子の役割についても探索する計画である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

野生型SMAD4を発現するがん細胞株とのChIP-seqによる比較では多くの結合部位が変異型と一致していた。
SMAD4のChIP-seq及びSMAD4ノックダウンによる遺伝子発現変化のRNA-seqによる検討結果を踏まえて、如何にSMAD4変異が転写調節に影響を与えるか、そのメカニズムを探索することにした。このため、転写活性化の指標であるヒストン修飾をエピゲノム状態の変化を概観する指標として採用し、ChIP-seqを行った。ここでSMAD4変異によるエピゲノム変化が短時間に作用するとは限らないため、siRNAによるノックダウンの代わりに新たにCRISPR/Cas9及びSMAD4に対するsgRNAを発現するレンチウイルスベクターを作成して安定的に変異SMAD4発現が抑制される細胞株を得た。コントロールsgRNAおよびSMAD4 sgRNA発現細胞からヒストン修飾抗体を用いてChIP-seqを行い、有意な転写活性化領域をq<10-4条件においてそれぞれ61,854箇所及び61,939箇所算出することが出来た。
変異SMAD4を発現する大腸がん細胞株を入手して同様にCRISPR/Cas9による変異SMAD4発現抑制細胞の樹立を試みたが、薬剤耐性選択等の条件検討にもかかわらずSMAD4発現は維持されていた。上述のエピゲノム情報取得など胃がん細胞側の解析が進展したことから胃がんでの分子機構解析を優先することにした。
SMAD4変異細胞の移植による担癌マウスモデルでの検討を試みたが、皮下移植・そして腹腔内注射のいずれにおいても腫瘍細胞の生着は得られなかった

今後の研究の推進方策

ヒストン修飾を指標としたエピゲノム変化がSMAD4変異に伴っているか明らかにすることでこれまでに見出した遺伝子発現変化のメカニズムを明らかにしていく予定である。併せて下流の標的遺伝子として変異SMAD4特異的なものがないか比較検討を行い、胃がんの進展への役割について明らかにしたい。
当初計画に加えて臨床的意義づけをより重視し、変異SMAD4の胃がん・大腸がんにおける意義について、臨床情報の公開データベースのデータを取得して分子分類或いは特定のがんの形質との関連についても探索する計画である。

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公開日: 2023-12-25  

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