| 研究実績の概要 |
大腸癌薬物療法においてエピゲノム治療の研究が進められる中、エピゲノムリーダーであるブロモドメイン蛋白質に対する阻害薬が次世代抗癌剤として注目されている。2018年に、クロマチン再構築因子であるSWI/SNF複合体のBAF, PBAFに次ぐ3つ目のサブタイプとしてnon-canonical BAFが新たに報告され、その構成因子であるブロモドメイン蛋白質のBRD9は、新規治療標的となる可能性のある分子として期待されている。ncBAFはクロマチンの三次元構造を調節するCTCFと結合することが報告されており、クロマチン構造を変化させ、遺伝子発現制御を行なっている。近年、BRD9は腫瘍免疫との関連性も報告されているが、大腸癌との関連性を明らかにした報告はまだない。大腸癌におけるBRD9の発現意義を明らかにし、BRD9阻害が大腸癌に対する治療標的となる可能性があると考え、研究を計画した。 当院切除検体を用いた免疫染色、染色強度と各症例の臨床病理学的因子の比較検討、統計解析を進め、BRD9が大腸癌の予後マーカーとなる可能性について示した。また、細胞実験としては、ノックダウン株を作成し、それぞれの細胞株における大腸癌腫瘍悪性度との関連性について検討した。動物実験モデルにおいて、ノックダウン株で腫瘍抑制効果が見られた。下流分子の同定については、網羅的解析を行い、E2F1パスウェイとの関連性を同定した。E2F1はRb経路とp53経路が関与する細胞周期とアポトーシスの制御因子として中心的な役割を担っており、その上流で機能するBRD9の制御は、画期的な新規治療戦略となる可能性がある。
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