研究課題
本研究ではゲノム(WESおよびWGS)、エピゲノム(ヒストン修飾およびDNAメチル化)、トランスクリプトーム(遺伝子発現)に臨床情報を統合したマルチオミックス解析を行っている。昨年度に引き続き、日本人肺がん症例でも特にドライバー変異が見つかっていない症例を中心に解析を行った。本年度では、昨年度の研究成果から同定したNotch signalやWnt/b-cateninシグナルに関わる転写コアクティベーターの解析を中心に研究を進めた。なお昨年度ではトランスクリプトーム解析においては遺伝子レベルでの発現検討をおこなったが、今年度はより詳細な解析を指向してアイソフォームレベルでの発現解析を行なった。転写コアクティベーターの発現と相関・逆相関のある上位15遺伝子をそれぞれ抽出し、予後との関連性を検討したところ、いくつかの遺伝子で発現量に応じて予後予測できることが明らかとなった。引き続きより精緻な患者層別化を目指し、機械学習(クラスタリング)を含めた解析方法の検討を行い、second-levelのクラスタリングを用いることで、予後に基づく精緻な患者層別化ができることを見出した。現在は上記結果をもとにさらなる解析を行いつつ、得られた研究成果を論文として投稿中である。
2: おおむね順調に進展している
研究実績の概要に記載した通り、日本人肺がん患者のゲノム・エピゲノム・トランスクリプトーム情報に臨床情報を含めた統合的マルチオミックスから、独自のクラスタリング手法を組み合わせた患者層別化手法を構築した。また予後に関連する遺伝子を複数同定しており、今後は引き続き予後関連遺伝子を中心とした詳細解析を行うことで、がんの本態解明につながる研究成果が得られると考えている。
今後は創薬標的の検討、詳細なシグナルパスウェイ(分子メカニズム)解明を行うとともに、wet実験を用いたバリデーションスタディや動物実験も念頭に日本人肺がんにおけるドライバー変異ネガティブ症例の肺がん発症メカニズムの解明を行う。また得られた研究成果を学会や論文として報告することも積極的に行う予定である。
当初の見込みよりも順調に研究が進展し、計画よりも少ないコストで研究を進展することができた為。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件)
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