研究課題/領域番号 |
22K07186
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
坪田 庄真 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (10801657)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 神経芽腫 / スフェア / MYCN / シングルセル解析 |
研究実績の概要 |
研究代表者は独自の細胞培養系(in vitro神経芽腫発生モデル)を用いて神経芽腫のがん化に時期特異性が存在するという予備データを得た。本研究は時期や細胞特異性に着目した神経芽腫の発生機構の解明を目的とし、将来的な新規治療法の開発に資する基盤を構築することを目指している。具体的には、(実験1)生後0日マウス副腎組織中に存在しがん遺伝子MYCNにより形質転換する細胞タイプの同定、(実験2)がん化細胞タイプの週齢別での存在確認、(実験3)がん化細胞タイプの週齢別の選別と遺伝子発現解析、(実験4)時期特異性を担う遺伝子の同定という実験項目について研究を進めている。昨年度、実験1について細胞表面抗原に対する抗体を用いた細胞選別を試したが、良い抗体がなく実験のセッティングに幾つか問題点が生じ、抗体を用いた細胞選別という方法は難しいと考えた。実験2については既に知られている神経芽腫の起源と推定されている副腎組織中の細胞タイプについて週齢別の存在をRNA-ISHで評価した。今年度は、当初の研究計画を変更し、各週齢のマウス副腎組織(0週、1週、2週、3週齢)と0週齢の副腎組織由来細胞をMYCNにより形質転換したスフェアを対象にシングルセル遺伝子発現解析を行った。時期特異的に消失する細胞タイプの存在を確認し、またMYCNにより形質転換したスフェア細胞の特徴付けを行った。さらに、レポーターマウスを用いた細胞単離と形質転換実験を組み合わせることで、概ねMYCNにより形質転換する細胞タイプの絞り込みができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度から少々遅れているが、実験1で当初予定していた表面抗原マーカーを用いた細胞選別で、想定通りに実験を遂行できなかった。その代案として、今年度はマウス副腎組織(0週、1週、2週、3週齢)と0週齢のマウス副腎組織由来細胞をMYCNにより形質転換したスフェアを対象にシングルセル遺伝子発現解析を行った。副腎組織の週齢別の比較によって、神経芽腫の起源細胞だと推測されている神経芽細胞は週齢が経つにつれて消失していくことが分かった。これについては昨年度に実施したRNA-ISHの結果と合致した。一方で、MYCNにより形質転換したスフェアの遺伝子発現を副腎組織と比較することで、MYCNにより形質転換した起源となる細胞の候補を明らかにした。これまで知られていたようにチロシン水酸化酵素(Th)を発現していることが分かった。またTh-EGFPレポーターマウスを用いた細胞選別によりMYCNにより形質転換する細胞はTh陽性細胞であることが明らかとなった。興味深いことに、この細胞タイプは神経芽細胞の特徴よりもクロム親和性細胞の特徴を持つということが明らかとなった。神経芽腫は神経芽細胞由来だと考えられていたが、クロム親和性細胞である可能性も出てきた。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた実験1から3については概ね良好な結果を得ることができたが、神経芽腫の起源が神経芽細胞なのかクロム親和性細胞なのか新たな疑問が生じてしまう結果となった。これについてシングルセル遺伝子発現解析結果の精査を行うとともに、神経芽細胞もしくはクロム親和性細胞を特異的に分取できる新たなレポーターマウスの導入を検討する。さらにシングルセル遺伝子発現解析を引き続き行い、細胞や時期特異性についてMYCNと強調的に働くと考えられる遺伝子について同定を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度からの持ち越しがあったことや、シングルセル遺伝子発現解析のデータ処理に時間がかかり、実験に使用する消耗品等の予算を消化することができなかった。次年度は新たなレポーターマウスの導入や解析結果から絞り込んだ遺伝子について介入実験などに使用予定である。
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