研究課題/領域番号 |
22K07190
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
賈 維臻 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (40791281)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Galectin-3 / 造血幹細胞 / 体外維持 / 白血病 |
研究実績の概要 |
本研究はGalectin-3(Gal-3)による造血幹細胞の維持機構に立脚して、Gal-3の発現や機能を制御することで、造血幹細胞の細胞周期を回しながら未分化性を維持・老化予防する技術の確立を目指す。さらに得られた知見より、骨髄移植効率の向上や白血病の治療への応用の可能性を検討する。 初年度は、「Gal-3発現による造血幹細胞の維持と細胞老化に与える影響の解析」を中心にして研究活動を進めた。Multi-protein expressionシステムを用いて、マウス骨髄から単離した造血幹細胞にGal-3と蛍光色素遺伝子を発現させ、培養条件最適化の検討を行うことで、その結果として造血幹細胞の動態変化とGal-3の発現を同一細胞内で観察することが可能になった。リアルタイム顕微鏡を用いて、Gal-3の発現を蛍光色素強度でモニターしながら、幹細胞の分化・老化度をGal-3の発現とともに解析したところ、Gal-3の発現制御により造血幹細胞の老化及びアポトーシスを抑制することが明らかになった。体外で増幅したGal-3陽性の造血幹細胞の機能が保たれているかを確認するため、骨髄移植実験を今後検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究を開始した初年度ということもあり、現在のところは大きなトラブルも無く、実験計画書に記載した研究計画通りに進んでいる。本研究課題は3年間での実施を予定しており、最終的な到達目標を考慮しても、「おおむね順調に進展している」と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね研究計画書に記載したスケジュールおよび内容に従って研究は進行しており、令和5年度も当初の目標に向けてこのまま研究を進めて行く予定である。 (1) Gal-3を過剰発現させた造血幹細胞の骨髄再構築能の評価 体外で増幅したGal-3陽性の造血幹細胞の機能が保たれているかを確認するため、造血幹細胞をレシピエントマウスに移植する骨髄移植の実験を行う。体外で維持・増幅させたGal-3の発現強度で分画した細胞を一匹あたり500個ずつ致死量照射した野生型マウスに移植して、フローサイトメトリーを用いてドナー由来造血幹細胞が血液細胞を作る能力を評価する。さらに、二次移植および三次移植した後の、ドナー造血幹細胞由来の白血球の割合を測定する。一方、同様の骨髄移植方法を用いてヒトの臍帯血由来造血幹・前駆細胞の体外増幅効果を評価する。 (2) Gal-3過剰発現による遺伝子発現パターンの特徴についてのプロファイリング 白血病治療への応用に対する適合性を判断するために、Gal-3を過剰発現させた造血幹細胞内の遺伝子発現プロファイルの取得が必要である。そのため、今年度の研究結果とともに、骨髄移植した後の造血幹細胞においても、静止状態の制御機構に加え、造血幹細胞の老化や代謝など幹細胞の運命を決定する変動遺伝子を把握する。
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