研究課題/領域番号 |
22K07194
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
清成 信一 北里大学, 医学部, 講師 (70570836)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 神経芽腫 / MYCN / 葉酸代謝拮抗剤 |
研究実績の概要 |
小児がんの一種である神経芽腫の約20%の症例でMYCN遺伝子の増幅(MYCN増幅)が認められる。これまでに研究代表者らはMYCN増幅型の神経芽腫細胞が葉酸代謝拮抗剤に対して高い感受性を示すことを明らかにした(Yamashita et al., Cancer Science, 2020)。その一方で、MYCN遺伝子が正常(MYCN正常)の神経芽腫細胞が薬剤抵抗性となる分子メカニズムは未解明であった。新規ヌクレオチド生合成経路を阻害する葉酸代謝拮抗剤の作用機序を考えた時、培養条件下で活発に増殖しているMYCN正常の神経芽腫細胞が高度に耐性化している理由に興味が持たれた。予備的な検討の結果、MYCN正常の神経芽腫細胞は葉酸代謝拮抗剤によって遮断された経路を迂回してヌクレオチドを生合成できる新奇な代謝経路を備えている可能性が示唆された。そこで、本研究ではMYCN増幅の有無によって異なるヌクレオチド生合成経路の全貌を解明し、既存の葉酸代謝拮抗剤への抵抗性の解除、あるいはMYCN正常型に特徴的な代謝経路の阻害を作用機序とする新しい治療標的分子を同定することが最終目標である。これまでにMYCN正常の神経芽腫細胞において特に重要と考えられる遺伝子群の選定とsiRNAによる遺伝子ノックダウンおよびCRISPR-Cas9による遺伝子ノックアウト、また既存の研究用阻害剤を用いた細胞増殖阻害能の測定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までに一般的な細胞培養培地への添加物であるウシ胎児血清(FBS)からの葉酸の持ち込みや一般的な細胞培養用培地に含まれる葉酸等のビタミン類やヌクレオシド濃度の違いを理解し、目的の表現型を評価できる実験系を構築した。引き続いて遺伝子ノックダウン実験や阻害剤の感受性試験を実施したが研究開始当初に選定した遺伝子群への介入実験で明確な結論が得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは候補遺伝子について個別に介入実験を行ってきた。単独の遺伝子の機能阻害ではMYCN増幅型とMYCN正常の神経芽腫細胞の差が大きく現れていないため、2つの遺伝子に対して同時に機能阻害を行う等の方策を考えている。引き続きCRISPR-Cas9によるノックアウト株の取得を行い、これらの細胞株に対して2個目の遺伝子への介入実験(siRNA、阻害剤処理)を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述の通り、当初の想定よりも研究計画に遅れが生じているため物品費の使用が少ない状況だった。本年度は特殊培地や新規のsiRNAと阻害剤購入などによって物品費の支出が増えると予想している。
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