DNAメチル化は遺伝子発現を負に制御するエピジェネティクスの代表的な仕組みである。がん細胞においてグローバルにはDNAメチル化が抑制される一方で、がん抑制遺伝子などの特定の領域ではDNAメチル化が亢進し、がんの細胞生物学的変化を促進すると考えられている。我々は複数のNPM-ALK陽性未分化大細胞リンパ腫 (ALCL) 患者由来細胞株で遺伝子発現やメチル化状態を検討し、ALCLにおいて共通してメチル化が亢進している領域とメチル化状態が異なる領域が存在することを見出した。本研究では(1)ALCLの病態形成に真に重要なDNAメチル化異常を明らかにすること、(2)メチル化状態を制御する分子機構の解明、を目指した。 (1) RNA-seq解析やデータベースを用いた解析からALCL細胞において共通してメチル化が亢進している遺伝子をスクリーニングし、Ccnd2、Degs2、Nrip1などを含む8種類の遺伝子をALCL病態に関与する新規がん抑制遺伝子候補として同定した。これらをクローニングし、薬剤誘導性に発現を誘導するALCL細胞を作成したが、これらは細胞増殖能に対して影響を及ぼさなかった。浸潤能や薬剤耐性能など他の機能に関与する可能性が考えられた。 (2)ALCL細胞においてメチル化状態が異なる遺伝子の上流をエンリッチメント解析した結果、メチル化状態を制御する可能性のある分子としてSTAT1を見出した。IFNgによりSTAT1を活性化させると脱メチル化酵素TET2と結合し、DNA脱メチル化を誘導することも見出した。
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