研究課題/領域番号 |
22K07196
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研究機関 | 名古屋経済大学 |
研究代表者 |
前田 真男 名古屋経済大学, 人間生活科学部管理栄養学科, 教授 (00769614)
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研究分担者 |
下野 洋平 藤田医科大学, 医学部, 教授 (90594630)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 卵巣がん / DPP4 |
研究実績の概要 |
卵巣がん患者の手術検体から樹立したヒト異種移植腫瘍(PDX)と脂肪組織由来幹細胞(ADSC)を用いて、脂肪細胞から分泌されるDPP4と卵巣がんの進展について解析を行っているところである。標的タンパク質のN末端を切断してタンパク質の生物活性を失わせるペプチターゼであるDPP4は活性部位をC末端にもち、変異体(H750E)がペプチターゼとしての活性がないことはすでに知られている。本研究では、DPP4の発現、DPP4の活性とがんの進展についての関係について解析をすすめている。 (1)DPP4の野生型および失活型を強制発現させた脂肪細胞が卵巣がん細胞におよぼす影響の解析:私たちはDPP4の野生型とペプチターゼとしての活性を失わせた失活型(H750E)を強制発現させた脂肪細胞を樹立し、卵巣がんPDX細胞とともに免疫不全マウスに共移植した。DPP4の野生型を強制発現させた脂肪細胞と共移植した腫瘍は、DPP4の失活型を強制発現させた脂肪細胞と共移植した腫瘍、およびコントロールの脂肪細胞と共移植した腫瘍と比べて腫瘍が増大する傾向がみられた。 (2)GFPを恒常発現させた卵巣がん細胞株を免疫不全マウスの腹腔内に投与して腹膜播種させ、その後DPP4阻害剤を腹腔内投与後に開腹し腹膜播種したがん細胞を顕微鏡で観察した。DPP4阻害剤を腹腔内投与したマウスの腹腔ではGFPの発現が少ない傾向がみられた。 これらの結果より、脂肪細胞から分泌されているDPP4がC末端にある活性部位を介して、卵巣がんの進展や転移の促進に関与している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
DPP4の野生型と失活型を強制発現させた脂肪細胞を卵巣がんPDXとともに免疫不全マウスに共移植させた実験では、DPP4の野生型の強制発現させた脂肪細胞と共移植した腫瘍で腫瘍が増大する傾向がみられたものの有意差がみられなかったため、再度実験を行う必要があると考えられた。また、GFP恒常発現卵巣がん細胞株を使った腹膜播種マウスへのDPP4阻害剤腹腔内投与実験も、再現性がとれていないため時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き研究計画に従って研究を推進する。DPP4の野生型と失活型を強制発現させた脂肪細胞を卵巣がんPDXとともにマウスに共移植する実験を行い、GFP恒常発現卵巣がん細胞株を使った腹膜播種マウスへのDPP4阻害剤腹腔内投与実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
樹立した卵巣がんPDX細胞と脂肪細胞の3次元混合培養実験の再現実験、DPP4の野生型と失活型を強制発現した脂肪細胞と卵巣がんPDXのマウスへの共移植実験など、すでに樹立あるいは作成した細胞株等を使った実験であるため、新たに樹立・作成する費用がかからなかった。今後は、DPP4の標的ペプチドの候補を探求するために行う次世代シークエンス(NGS)実験も検討しているため、こちらの費用に当てたいと考えている。
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