研究課題/領域番号 |
22K07197
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
三木 貴雄 関西医科大学, 医学部, 講師 (30452345)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | がん抑制遺伝子 / 概日リズム / Rb |
研究実績の概要 |
がんの新しい分子標的薬を開発するために、がんと概日リズムという新たな関連を題材とすることし、新規がん制御機構の同定を目指す。報告者はこれまでがんと概日リズムがクロストークする分子機構を明らかにしてきた。本研究では、概日リズムの制御因子としてのヘムに着目した。これまでの報告で、ヘムタンパク質の補欠分子族であるヘムは概日リズム遺伝子PER2やREV-ERBsのリガンドとなりその活性を制御することが報告されている。最近報告者らは、がん抑制タンパク質Rbの遺伝子欠損マウスではPER2のヘム結合が過剰となり、概日リズムが異常となることを見出した。この結果は、Rbが標的とヘムの結合を変化させることで標的の機能を制御し得ることを示唆する。予備実験で、Rbによるヘム制御が、これまで報告されているRbによる細胞周期や細胞分化、代謝といった標的制御機構にどれほど寄与しているかを、網羅的遺伝子発現解析法(CAGE法)を用いて検討した。その結果、Rb経路の約3割がヘムを介して制御されている可能性を示唆するデータを得た。そこで本研究では、CAGE法により得られた網羅的結果を詳細に解析し、Rbによるヘムを介した標的制御経路を同定し、がんの創薬につなげることを目的とし、研究を推進している。 (研究の意義、重要性) がんの新たな分子標的薬の開発を目指す場合、候補因子の同定が重要である。近年の免疫チェックポイント阻害薬の成功は、多角的な視点からがん研究を行うことが有用であることを示唆している。興味深いことに、がんと概日リズムは疫学的に強い関連があることが国際がん研究機関(IARC)より指摘されているが、その分子機構に関しては不明な点が多く、未開の分野である。本研究課題では、「がんと概日リズムという新たな視点から、未同定のがん制御機構や概日リズム制御機構を同定することができるのではないか」と考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述したCAGE解析の結果は、がんでよく見られるようなRb欠損による表現型の一部がヘム制御異常を介して生じている可能性を強く示唆しており、がんとRb、ヘムの関連した新規がん標的制御経路を探索するための良い系であると考えられる。そこで本研究ではマウスを用いた実験系を用いてRBとヘムが関連する系の樹立を行った。そこでまず、肝臓特異的Albumin-CreマウスとRb floxマウスを交配させ、Albumin-Cre;Rbfloxマウスを得た。まず、これらのマウスにヘム経路の阻害剤であるCobalt protoporphyrin IX(CoPP)を腹腔内投与した。その後24時間後に肝臓のcarcinogenとして広く使用されているDiethylnitrosamine(DEN)を腹腔内投与し、DEN投与後24時間後に肝臓を回収した。肝臓からmRNAを回収し、qPCRにより遺伝子発現をCoPPとRBの有無で比較したところ、RB欠損による遺伝子変化がCoPPによりレスキューされている遺伝子群を得ることができた。その遺伝子群の中から数個をいくつかの基準で選択し、精製タンパク質を得た。得られた数種の精製タンパク質を用いてヘム結合能を定量したところ、これまでにヘムタンパク質として報告されていないが、ヘムを結合し得るタンパク質を得た。現在そのタンパク質について詳細に解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、本研究ではRB欠損による遺伝子変化がCoPPによりレスキューされている遺伝子群を得ることができた。次に、その遺伝子群の中から数個をいくつかの基準で選択し、精製タンパク質を得た。得られた数種の精製タンパク質を用いてヘム結合能を定量したところ、これまでにヘムタンパク質として報告されていないが、ヘムを結合し得るタンパク質を得た。以上の結果は、以下の2点で重要である。 ①新規ヘム結合タンパク質を同定したという新しい可能性を示唆している。 ②RbがPER2のみならず他の制御因子のヘム結合量を制御することができる。 以上のことから得られたタンパク質において詳細にヘム結合能を検討する。用いる方法として、まず、ヘム結合タンパク質にはヘム結合モチーフと呼ばれるCP配列がしばしば存在することが報告されているので、その配列に変異を入れた時にヘム結合能が変化するかどうかを精製タンパク質を用いて検討する。また、この手法によりヘムに結合しない変異体を得ることを同時に狙う。ヘムに結合しない変異体が得られたならば、細胞内での局在や、既存の標的タンパク質などに対するヘム結合の影響を、ウエスタンブロッティング法や細胞染色法、qPCR法を用いて検討する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ解析用のPCを購入する予定であったが、データ解析の必要性が次年度になりそうだったので、購入を見送った。次年度にPCを購入する予定である。
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