研究課題/領域番号 |
22K07202
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
伊東 潤二 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 非常勤研究員 (10638844)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 初期乳がん / マウス / 乳管の異形成 |
研究実績の概要 |
DNA修復能が低下しているscidマウス(10週齢)に、エストラジオール(E2)の腹腔内投与を25日間続けることで、微小浸潤を伴う乳管の異形成を発生させることができる。異形成は乳がんの初期と考えられており、この初期乳がん誘導系で、乳がん発生ないしは初期の進行を抑制する物質を評価できる。ネガティブコントローでは生理食塩水(PBS)を投与し、ポジティブコントロールではE2単独投与を行う。 本研究は、母体の血中に存在する様々な物質に着目し、上記のマウス実験系で、それらをE2と同時投与することで、初期乳がんへの影響を調べた。乳腺組織を採取し、凍結切片での免疫染色で異形成を調べた。この実験系では、E2の単独投与では、25日目で乳管の異形成が観察されるが、もし、同時投与した物質に抑制効果があれば、異形成の頻度が低下する。探索の結果、妊娠期のみ存在するステロイド系の物質が、異形成の発生頻度を低下させていた。それ以外の物質では、明らかな変化はみられなかった。この結果から、この新規物質が、初期乳がんの発生を抑えることを明らかにした。 エストロゲン受容体を発現している乳がん細胞の培養細胞系で、その物質が遺伝子発現にどう影響するかを調べた。E2の投与と、E2+新規物質の投与とで、網羅的遺伝子発現解析の結果を比較した。その結果、E2の投与で上昇する、あるサイトカイン受容体の働きを、新規物質が抑えていることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初期乳がんを抑える物質の探索は完了したが、そのメカニズムの解明には、遺伝子組み変えマウスでの実験が必要である。しかし、その段取りができていない。
|
今後の研究の推進方策 |
培養細胞系での検証を進め、得られた知見を確かなものにする。 具体的には、1)同定した物質がE2の遺伝毒性を抑えているかどうか、2)遺伝子発現の変化は、タンパク質レベルでも確かめられるか、3)同定した物質による遺伝子発現の変化は、直接制御かどうか、である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
抗体の納期を確認したところ、2022年度中には納品されないことが判明したため、発注をキャンセルした結果、次年度使用額が生じた。
|