研究実績の概要 |
がん細胞には染色体外環状DNA(eccDNA)が広範に存在することが報告され、がんの増殖や不均一性との関連が示唆されている。 本計画では、eccDNAを有する細胞株の生存にどの遺伝子が選択的に必要で、どの薬剤に対して感受性が選択的に高いかを明らかにすることを目標として、まず、eccDNAを有するがん細胞における生存に必須な遺伝子のプロファイリングおよび薬剤感受性プロファイリングの統合解析を実施した。具体的には、数百種のがん細胞株の全ゲノムシーケンス(WGS)データから各細胞株についてeccDNAのカタログを作成し、このデータを遺伝子発現プロファイリング(20,000遺伝子)、ゲノムワイドshRNAライブラリースクリーニング(20,000遺伝子)、ゲノムワイドCRISPRライブラリースクリーニング(20,000遺伝子)、薬剤感受性プロファイリング(4,500薬剤)と紐づける統合解析を実施した。全ゲノムシーケンスによるeccDNAの解析とCRISPRライブラリを用いたがん遺伝子スクリーニングを統合することにより、結果として、eccDNAを有するがん細胞において生存に必須な遺伝子(A、B)を同定した。続いて、実験的な検証として、生存必須遺伝子AをCRISPR-Cas9システムあるいは関連する阻害剤で抑制した結果、がん細胞株の増殖が有意に抑制されることが明らかになった。さらに、解析から明らかになった、eccDNAの複数の染色体融合点(break point)をダイレクトシークエンスにより確認し、FISH解析からもeccDNAの存在を確かめることができた。 加えて、eccDNAを有するがん細胞に対するより普遍的な治療標的を探索した結果、細胞周期や有糸分裂を制御する分子Cの阻害剤が有望であることを見出した。
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