研究課題/領域番号 |
22K07217
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
秋元 美穂 帝京大学, 医学部, 講師 (60437556)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 脂肪組織由来幹細胞 / IL-33 / 膵がん / 老化 / 肥満 |
研究実績の概要 |
IL-33ノックアウトマウスの入手に伴い、その脂肪組織由来幹細胞(ADSC)サンプルを追加した上で、前年度に引き続き、肥満や老化がADSCにおけるIL-33の発現および分泌におよぼす影響を調べた。 老齢マウスまたは高脂肪食摂取の肥満マウスの内臓脂肪組織から分離したADSCを培養し、IL-33の発現レベルおよび培養上清中のIL-33タンパクレベルをそれぞれリアルタイムPCRとELISAで定量したところ、老化や肥満に伴いIL-33が増加する傾向が認められた。また、ADSCがIL-33分泌を介してマウス膵がんPanc02細胞の増殖や浸潤におよぼす影響について、老齢マウスと肥満マウスに加え、IL-33ノックアウトマウスから分離したADSCを用いてin vitroで検討した。具体的には、Panc02細胞をADSC培養上清で培養し、MTTアッセイによる細胞増殖の評価、Wound-healingアッセイによる運動能の評価、マトリゲル浸潤アッセイによる浸潤能の評価を行った。その結果、肥満および老齢のADSCを用いた場合にいずれも促進される傾向が認められた。また、前年度の研究の過程で低酸素培養下のADSCにおいてIL-33の発現レベルおよび分泌レベルが亢進されることが新たに分かったが、低酸素下のADSCの培養上清も、Panc02細胞の増殖能、運動能および浸潤能を向上させることが確認された。 これらの現象は、抗IL-33抗体の添加により減弱された上、IL-33ノックアウトマウスから分離したADSCでは認められなかった。以上のことから、肥満、老化、低酸素下のADSCはIL-33の分泌を介して膵がん細胞の増殖や運動性を促進することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IL-33ノックアウトマウスの搬入の遅れから一部の計画の実施順を変更したが、計画全体としての大きな遅れはないと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ADSCがIL-33を介して膵がんの増殖・転移に及ぼす影響についてパラクラインおよびエンドクラインを想定した移植実験系で評価する。転移細胞をバイオイメージングで検出するため、ルシフェラーゼ発現Panc02細胞(Panc02-Luc細胞)を移植に用いる。パラクライン経路による検討では、マウスの右腹部皮下にPanc02-Luc細胞と各種ADSCを混合して移植する。また、エンドクライン経路による検討では、マウスの右腹部皮下にPanc02-Luc細胞を移植後、ADSCの培養上清を尾静脈より投与する。いずれの場合も、腫瘍形成確認後に腫瘍径を経時的に計測し、腫瘍体積を算出する。また、IVIS Imaging Systemを使用して、転移したPanc02-Luc細胞を発光バイオイメージングにより検出する。最近では、炎症環境だけでなく代謝環境にもIL-33が関与することが報告されているので、ADSC由来のIL-33が膵がんの微小環境に及ぼす影響について網羅的に検討する。そのために、腫瘍から抽出したRNAを材料として遺伝子発現解析を行い、各種アノテーションデータベースを活用して関連のGene Ontologyやパスウェイなどを探索する。この解析により特定された因子やパスウェイが特定された場合、タンパクレベルや活性化の状況などを調べ、関与の有無を検証する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度でのIL-33ノックアウトマウスの搬入の遅れのため、実験計画とそれに伴う使用計画の順番に一部変更が生じたため。
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