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2023 年度 実施状況報告書

腫瘍免疫系における転写因子NRF3を介した肥満パラドックスの分子メカニズム解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K07219
研究機関同志社大学

研究代表者

和久 剛  同志社大学, 生命医科学部, 准教授 (40613584)

研究分担者 小林 聡  同志社大学, 生命医科学部, 教授 (50292214)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードNrf3 / がん / 免疫逃避
研究実績の概要

本研究の当初の目標は「がんの肥満パラドックスにおける転写因子Nrf3の機能解明」であった。昨年度終了時点で、正常体型ではNRF3発減量が多いと腫瘍増大リスクが上昇するのに対し、肥満体型ではNRF3発現量が多いと腫瘍増大リスクが低下することを明らかにし、その知見をThe Tohoku Journal of Experimental Medicineに上梓した。加えて肥満パラドックス解析を通して、Nrf3が免疫細胞などのがん細胞の周辺細胞にも影響することを見出した。さらに昨年度は、NRF3はアミノ酸欠乏で活性化し、アミノ酸を細胞内に取り込むことでmTORC1シグナルを制御することを見出した。また、Nrf3がオートファジーを誘導することで、メラニン産生細胞の生存を維持し、メラニン産生を促進することを明らかにした。これらの知見はそれぞれ、iScienceとCell Reportsにて報告していた。
がん細胞は、腫瘍微小環境からのアミノ酸取り込みやオートファジーによるタンパク質分解でアミノ酸を補給し、自身の増殖を促進するだけでなく、がん細胞を攻撃するために腫瘍に浸潤してきた免疫細胞の活性を抑制することが報告されている。そこで今年度以降は新たな研究目的として、NRF3がアミノ酸代謝を介して腫瘍免疫に及ぼす影響の検討やそのメカニズムの解明を試みる。その方法として、Nrf3過剰発現もしくは低発現させたマウスがん細胞を樹立し、それらがん細胞を用いたin vitro解析、同系マウス移植によるin vivo腫瘍形成モデル、摘出した腫瘍サンプルのFACS解析による免疫系への影響の検討、およびがん細胞と免疫細胞との共培養系を包括的に駆使して展開する予定した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

Nrf3が腫瘍免疫に及ぼす影響を調べるため、がん細胞を同系マウスへ移植する同系移植解析を行った。まずは樹立したNrf3過剰発現もしくは低発現マウスがん細胞を同系の野生型マウスへの移植実験し、腫瘍形成への影響を調べた。その結果、Nrf3は腫瘍形成を促進させることを見出した。しかし興味深いことに、免疫不全マウスへの同系移植実験では、Nrf3による腫瘍形成の促進効果は消失することを見出した。この結果は、Nrf3による腫瘍増大は免疫系と密接に関連していることを示唆している。そこで次に、Nrf3が腫瘍免疫の中心的プレーヤーであるCD8+T細胞と制御性T細胞(Treg)に及ぼす影響を調べた。同系移植した野生型マウスから腫瘍を摘出し、そこに含まれているCD8+T細胞とTregを測定した結果、Nrf3過剰発現がん細胞由来の腫瘍ではCD8+T細胞の数が減少していた一方で、Treg数に変化はなかった。また、Nrf3過剰発現がん細胞由来の腫瘍に含まれるCD8+T細胞では、細胞障害性の指標となるIFNgやGzmBの産生量が減少していることも見出した。さらに、CD8+T細胞が標的細胞を認識し活性化するために必要な膜タンパク質であるMHC-I量が、Nrf3によって減少することも見出している。加えて、アミノ酸低下によりNrf3自体の発現量も増加する知見も得ている。これらの知見は、Nrf3はアミノ酸欠乏時に発現誘導および活性化し、MHC-Iを減らすことでCD8+T細部の活性化を抑制し、最終的にはがん細胞を免疫逃避させる可能性を示している。

今後の研究の推進方策

アミノ酸欠乏によるNrf3発現誘導や、Nrf3によるMHC-I減少の背景にある分子メカニズムや責任因子を明らかにする。また同系移植で見出されたNrf3による腫瘍増大が、CD8+T細胞の活性抑制によるものであるかを厳密に検証するため、抗原特異的なCD8+T細胞活性化を調べることができるOT-Iマウスモデルを用いたがん細胞と免疫細胞との共培養系を行う予定である。

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公開日: 2024-12-25  

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