研究実績の概要 |
がん細胞は『Don’t eat me signal』のような様々な免疫認識シグナルを発することで、免疫逃避をしており、このシグナルががん免疫療法のターゲットとなる。研究代表者が実施したこれまでの研究で、ヒト食道がん由来培養細胞およびヒト乳がん由来培養細胞に抗がん剤を添加することで、免疫逃避シグナルであるPD-L1, PD-L2, MFG-E8のmRNAおよびタンパク質の発現が亢進すること、PD-L1, MFG-E8のプロモーター上の発現亢進に関わる領域が転写因子Xの応答配列であること、転写因子XがPD-L1やMFG-E8の特定したプロモーター領域に結合していること、転写因子XのsiRNAを導入した食道がん細胞ではPD-L1 mRNAの発現亢進が抑制され, MFG-E8 mRNAの発現が増強されることを示す結果を得ている。 今年度は、ヒト食道がん細胞にCRISPR Cas9を導入することで転写因子Xノックアウト細胞を作製した。さらに、この転写因子Xノックアウト細胞に抗がん剤を添加してFlow cytometry解析をおこなったところ、抗がん剤刺激によるPD-L1の発現亢進がおこらなくなることを確かめた。これらの結果をもって、食道がんでは抗がん剤の刺激によって転写因子XがPD-L1のプロモーターに結合し、直接的にPD-L1の発現を亢進していることが示され、これらの成果を国際雑誌へ投稿するために準備している。
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