研究課題/領域番号 |
22K07254
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中西 良太 九州大学, 大学病院, 助教 (90771254)
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研究分担者 |
沖 英次 九州大学, 大学病院, 講師 (70380392)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Artificial intelligence / 微小肝転移 / 大腸癌 |
研究実績の概要 |
本研究はCTなどの画像診断で診断困難な大腸癌の微小肝転移を同定するAIを用いたツールを作成し、抽出された微小肝転移に特徴的な画像特徴量と病理画像との比較を行うことが目的である。その中で、まず当教室のデータベースを用いて大腸癌微小肝転移の同定を行うAI画像診断の作成に取り掛かった。当教室における2008-2020年の大腸癌手術データベースのうち、定期的な経過観察を行い、肝再発が指摘された100例、また2011-2020年の大腸癌肝切除データベースにおいて、肝切除後に再度肝再発を認めた80例のリストアップを行った。各症例において、肝転移が初めて同定された時点のCTを見なおし、その前に撮影したCT画像でも、再発腫瘍を認めなかったか、などを調査した。肝転移を認める画像から、同定困難な微小肝転移を同定するAIツールを作成しようとしたが、精度が上がらなかった。そこで肝再発が同定された際のCT画像と、同定される以前に撮影されたCT画像を収集し、以下の3つのグループに分類した。①CT値の調整次第で、1回前のCTで再発が同定可能、②CT値を調整しても、1回前のCTでは再発巣が同定不可能、ただし周囲血管の位置により再発とまったく同じ部位がわかる。③CT値を調整しても1回前のCTでは再発層は同定不可能、かつ周囲血管の位置関係も不明瞭。上記症例群を用いて再度AI解析を行った。その場合、③の存在により解析の精度が下がる結果が得られた。①②のみで再度解析を行うこととし、再度解析を行う予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点では解析の精度は不十分であるが、予定していたデータセットが揃っており、画像データの抽出も可能であった。画像データの処理、解析予定通り可能であるった。今後はさらに精度を上げるために症例群のさらなる選別、画像にかけるフィルターのかけ方、統一した画像条件などを検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
解析に使用するデータセットの調整を行う。まずは解析精度を上げるため、大腸癌微小肝転移症例群を①CT値の調整次第で、1回前のCTで再発が同定可能、②CT値を調整しても、1回前のCTでは再発巣が同定不可能、ただし周囲血管の位置により再発とまったく同じ部位がわかる。の2群のみ使用して解析を行っている。今後は病理結果で肝転移が確定した症例のみに絞る、上記①と、negative control(まったく肝転移のない部位)を用いた解析などを行い、AIツールの精度を上げる試みを繰り返す。微小肝転移が同定できるようになった場合は、微小肝転移の部位に注目し画像解析を行う。微小肝転移に特徴的な画像特徴量と肝転移術後病理所見を比較する。具体的には、当科における2011-2020年の大腸癌肝切除データベース約160例のうち、長径1cm以下の肝転移を認めた30例および、術前画像診断で同定されていない肝転移を切除肝標本内に偶発的に認めた10例を用い、長径1cm以下の微小肝転移、また偶発的に見つかった肝転移の病理像とCT画像より得られた微小肝転移に特徴的な画像特徴量を比較する。病理像の比較項目としては、分化型、粘液産生、増殖形態胆管内増殖性、壊死(核塵の有無)、壊死の程度(化学療法施行症例、tumor regression grade)、viableな癌細胞の分布、腫瘍内外の血管の発達、炎症細胞浸潤、嚢胞変性、周囲肝組織の線維化、周囲肝組織への浸潤性増殖の有無などを想定している。各項目の詳細な評価の補助として適宜特殊染色(PAS染色、EVG染色、マッソントリクローム染色など)、免疫染色(a-SMA、ki-67(MIB-1)、p53など)を追加する可能性がある。
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