研究課題/領域番号 |
22K07258
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
市川 大樹 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 助教 (60462793)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 多発性骨髄腫 / 薬剤耐性 / エピゲノム |
研究実績の概要 |
多発性骨髄腫はレナリドミド(Len)などの薬剤を用いても治癒には至らず絶対予後不良である. 我々はLen結合タンパク質であるCRBNやその基質の発現量とは無関係に, Len感受性を低下させる因子としてメチル化ヒストン結合分子(Protein X)を見出している. 一方で, このタンパク質をノックダウンさせてもLenに対する感受性の回復は強くなかった. そこでこのProtein Xのisoform(Protein Xiso)が協調していると推定し, そられの過剰発現細胞およびノックダウン細胞株を樹立して検討したが, 協調して抵抗性を示すことはなかった. 一方, MM CoMMpass StudyのRNA-seq dataを用いてH3メチル化酵素とProtein X発現量と予後について検討した結果, H3メチル化酵素とProtein X両高発現MM患者においては優位に予後不良であった. 次に, Protein Xがどのような機序でLenに対して抵抗性を示すのかについても検討を行った. これまでの解析で利用したDNA mciroarray・GSEA解析より, Len感受性MM細胞株においては”IFN response” gene setsが複数エンリッチされていた. また, Len耐性MM細胞株にIFN-betaを処理することでアポトーシスが誘導されることが明らかとなった. さらに, Len感受性MM細胞株ではLen処理でcaspase-8/9/3の活性化が見られるが, Len耐性MM細胞株では認められず, Len感受性MM細胞株にProtein Xを過剰発現させた細胞株においても, caspase-8/9/3の活性化は認められなかった.今後は, H3メチル化酵素とProtein Xとの関係性およびcaspase-8/9/3の活性化に至る上流シグナルの解析を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書の2022年度研究計画は, IMiDs(レナリドミド)耐性に関与するメチル化ヒストン結合分子(Protein X)とそのisoform(Protein Xiso)が協調してレナリドミド耐性に関与すると推定し, それら両方を過剰発現させたMM細胞株を樹立した. その後レナリドミド感受性に変化があるかをMTT法により確認したが, 実際にはProtein Xisoを過剰発現してもレナリドミドに対する抵抗性の増加は認められなかった. 一方でMM CoMMpass StudyのRNA-seq dataより, H3メチル化酵素とProtein X両高発現MM患者においては優位に予後不良であることがわかった. 現在, これらの因子とProtein Xとの協調について阻害剤などとの併用により検討を行っている最中である. さらにProtein Xのレナリドミド誘導細胞死に対する抑制機序の一端として, caspase-8/9/3経路を抑制していることが明らかとなった.こちらについても現在,その上流シグナルについて解析中であり, 概ね順調である.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は下記の通り遂行する. 1. H3メチル化酵素が実際にレナリドミド誘導細胞死に影響を与えるのか, 阻害剤やノックダウンなどを用いてMTT法・FACS法により検討する. 2.それらのメチル化酵素がどのような分子機構でProtein Xと協調して, レナリドミド誘導細胞死に関与しているかを調べるために, RNA-seq解析およびATAC-seqやChIP-seq解析などにより変動のある遺伝子群の同定する. 3. 同定した遺伝子がレナリドミド耐性に重要な役割を示すのか, 過剰発現やノックダウン細胞株を作製して検証する. また, 同定した遺伝子群が似た機能を持ち,協調してレナリドミド耐性に影響を及ぼす場合には, それらの標的分子についてノックダウンや過剰発現細胞株を作製する. その後, MTT法・FACS法・WB法などによりレナリドミド誘導細胞死への影響を解析する. また,レナリドミドにおいて重要な分子であるCRBNやその基質の発現量についても確認する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度の研究遂行において, ProteinXおよびそのisoformの両過剰発現細胞株でRNA-seqあるいはATAC-seq解析分として予算計上していたが, isoformを過剰発現させてもLenに対する感受性に影響がなかったために解析を行わなかった. 2023年度にH3メチル化酵素との協調性について検討行うため, その際にRNA-seqあるいはATAC-seq解析費用として使用する予定である.
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