研究課題/領域番号 |
22K07287
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
長塩 亮 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (40618568)
|
研究分担者 |
小寺 義男 北里大学, 理学部, 教授 (60265733)
朽津 有紀 北里大学, 医療衛生学部, 助教 (70878272)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 肺がん / がん幹細胞 / 診断マーカー / 膜タンパク質 |
研究実績の概要 |
がん治療は日々進歩しており、様々な薬剤や治療法が開発されているが、がん全体の5年生存率は6~7割程度と根治に至っていないのが現状である。この理由として、がん組織中にごく少数含まれるがん幹細胞の存在が原因の1つであると考えられている。がん幹細胞は化学療法や放射線治療に抵抗性を示し、自己複製能と細胞の分化により遠隔転移や再発の原因となる。これらのがん幹細胞を検出するための優れたマーカーを探索するため、我々は山中4因子を肺腺がん細胞株に導入することで作製したがん幹細胞の性質を示すがん幹細胞様細胞を用いて、膜タンパク質に特化したショットガン解析を行った。元の親株と膜タンパク質の発現を比較することで、がん幹細胞様細胞で特異的なタンパク質が551個同定され、そのうち325個が膜タンパク質であった。また、129個は細胞膜局在であるとの報告があり、膜タンパク質の回収効率は良好であった。同定された分子の中には肝臓がん幹細胞との関連の報告があるROBO1やがん幹細胞で発現が高くCD49fとしても知られるITGA6など、がん幹細胞に関係の深い膜タンパク質が含まれていた。これらの同定された膜タンパク質について、次の条件にて絞り込みを行った。(1)文献検索や公開データベースを用いて、同定されたタンパク質群が細胞膜に局在している。(2)肺がんやがん幹細胞との関連性についての報告がある。(3) 免疫染色や免疫ブロット法での検討において、親株に比してがん幹細胞様細胞で発現が高い。(4)培養上清中へと分泌される。これらの条件を満たした膜タンパク質については、現在、肺がん組織を用いた免疫染色法を行うことで、組織診断マーカーとしての評価を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画ではがん幹細胞様細胞を2種類用いて比較検討を行う予定であったが、現状では1種類の比較が完了した段階である。現在、2種類目のがん幹細胞様細胞を用いたショットガン解析を準備しており、その準備が整い次第、LC-MSを用いた解析を実施する。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度と同様にもう1つのがん幹細胞様細胞を用いたショットガン解析を行い、さらなるマーカー候補分子の絞り込みを行う。解析の結果、同定されたマーカー候補となり得る膜タンパク質については、肺がん組織を用いた免疫染色により組織診断マーカーとしての評価、肺がん患者血清を用いたELISA法による血清診断マーカーとしての評価を実施する。また、マーカーとしての有用性が示唆された膜タンパク質に関しては治療標的としての妥当性について、培養細胞を用いたin vitroの実験系にて確認を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
もう1種のがん幹細胞様細胞の解析が終了しておらず、翌年度に実施する予定である。次年度使用額はその解析のための費用として使用する。
|