研究課題/領域番号 |
22K07290
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研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
吉川 清次 同志社女子大学, 薬学部, 教授 (40333562)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 脂肪分化 / 上皮間葉転換 / メタボローム |
研究実績の概要 |
がんの転移・浸潤、化学療法耐性、幹細胞特性に関与する上皮間葉転換における創薬標的の探索を進めている。特に脂肪分化誘導、代謝標的に注目をし研究を進めている。 2022年に遺伝子組換実験室を整備し、本格的にlentivirus による遺伝子導入実験を再開、2023年gelcountが整備され、脂肪分化誘導による効果の検証を進めた。 今季shZEB1・shZEB2・shP1 (上皮化誘導スクリーニングで同定したshRNA) による上皮化誘導は、3T3L1細胞・間葉系乳癌細胞において、rosiglitazoneによる脂肪分化誘導 (CD36発現、BODIPY取込能) を抑制することを見出し、脂肪分化は間葉系乳癌細胞特異的な現象であることを発見した。不死化乳腺上皮細胞におけるEMT/HRas遺伝子誘導系においては、rosiglitazoneによるCD36発現・BODIPY蓄積誘導を認めず、短期EMTでは脂肪分化能を獲得しないことを確認した。一方MCF12A細胞の解析から、rosiglitazoneによる脂肪分化を抑制する物質と、脂肪分化誘導を促す化合物をそれぞれ同定した。間葉系乳癌細胞株におけるrosiglitazoneによる脂肪分化誘導前後のRNA発現データを取得し、解析を進めている。特に過酸化脂質が原因で起こる鉄依存性細胞死Ferroptosisとの関係に着目して解析している。 癌幹細胞モデルにおける、EMT前後、Ras遺伝子の有無、2D vs 3D培養条件下でのRNAシークエンス とメタボロームデータの解析を進め、分岐鎖アミノ酸代謝に間葉系癌細胞の治療標的の存在が示唆された。標的遺伝子対するshRNAを作成、ノックダウンによる増殖能への効果を検証している。また癌幹細胞モデルであるRas間葉細胞の3D培養特異的代謝物から、治療標的になりえる遺伝子をRNAシークエンスから抽出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験環境は整いつつあり、ポジティブなデータが得られつつあるものの、講義・実習を分担する教員の退職に伴い、薬学部・看護学部の教育に費やす時間が増加し、研究時間が限られている。
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今後の研究の推進方策 |
新たに導入した、Gelcount機器による 2D・3D増殖能の評価の結果、脂肪分化単独では増殖能を抑制できず、脂肪分化誘導に伴って発現上昇する標的分子の探索を行う予定である。これまで化合物を用いた実験では、脂肪酸合成を抑制することで増殖抑制ができることを見出している。shP1はフェロプトーシス経路に含まれる遺伝子を標的にしているため、上皮化ー脂肪分化ーフェロプトーシスの関係に着目し、dry/wet両方向から解析を進めていく予定でである。
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次年度使用額が生じた理由 |
教育活動に時間と労力を取られ、研究に費やす時間が限られた。2024年度は、「今後の研究の推進方策」に記載したように新たな仮説も生まれてきたために、その検証に向けて有効に活用する予定である。
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