研究課題/領域番号 |
22K07292
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
菊地 順子 北海道大学, 大学病院, 特任助教 (40739637)
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研究分担者 |
畑中 佳奈子 北海道大学, 大学病院, 特任講師 (10399834)
天野 虎次 北海道大学, 大学病院, 特任助教 (20374514)
畑中 豊 北海道大学, 大学病院, 特任准教授 (30589924)
木下 一郎 北海道大学, 大学病院, 教授 (40343008)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | SWI/SNF複合体遺伝子 / 免疫チェックポイント阻害薬 / Tumor mutational burden |
研究実績の概要 |
本研究は免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の治療効果予測バイオマーカーとしてのSWI/SNF変異の意義についての検討を目的としている。まず、公共データベースを用いて、悪性黒色腫における29個の全SWI/SNF複合体遺伝子変異解析のICIの治療効果予測における有用性について検討を行なったところ、変異あり群はなし群と比して全生存期間延長の傾向を認めた。保険診療で行われる遺伝子パネル検査では29のSWI/SNF複合体遺伝子のなかで4つの遺伝子に関して遺伝子変異解析が行われている。この4つの遺伝子変異を対象として治療効果を比較すると、変異あり群はなし群と比して全生存期間延長の傾向を認めたが、統計学的優位性は示されなかった。SWI/SNF変異の意義を検討するためには、保険診療で検出可能な4遺伝子のみでは不足しているため、その他の25遺伝子についても解析に含めていく必要があることがわかった。 また、デコンボルーション法用いてTCGA-SKCMデータベースの解析を行なった。腫瘍局所浸潤免疫細胞各サブタイプの比率はSWI/SNF複合体遺伝子変異の有無によって差を認めなかった。SWI/SNF複合体遺伝子変異は腫瘍浸潤免疫細胞比率とは独立した予後因子である可能性が示唆された。 現在、ICIの効果予測バイオマーカーとして、Tumor mutational burden (TMB) が確立しているが、遺伝子パネル検査を行なった症例で、High症例、low症例を抽出し、全エクソンシークエンス、RNAシークエンスを検査を依頼中である。解析結果が返却されたら、TMB High, Low症例におけるSWI/SNF複合体遺伝子変異解析を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は膵臓癌、胆道癌症例での検討を予定していたが、遺伝子パネル検査に使用した検体は生検が多く、ネオ抗原の同定には正常組織が必要なことより、検体量が大きい手術検体が必要となった。院内に保管されている本研究に使用可能な手術検体症例が想定より少なかったため、方針を変更し、TMB-high, lowの検体での検討を行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
現在TMB highとlowの症例でのRNAシークエンス、全エクソンシークエンスの結果を解析中である。SWI/SNF複合体の29遺伝子発現について、TMB highとTMB lowで比較を行う。また、デコンボルーション法を用いて、免疫関連の細胞分画予測を行い、ICIの効果と主要微小環境との関連について検討を行う。RNA-seqデータよりネオ抗原ペプチドを予測する。現在全国の保険診療でのがん遺伝子パネル検査の変異結果と診療情報(治療例とその効果)についての情報がC-CAT(がんゲノム情報管理センター)に収集されてる。現在3万人以上の変異結果と診療情報が登録されており、99%の症例で二次活用への同意が得られている。当院はがんゲノム中核拠点病院であり、無償で使用可能である。現在院内での倫理審査が終了し、C-CATへ利活用についての審査を依頼中である。許可がおりれば、情報を利用可能であり、SWI/SNF遺伝子変異の有無でのICIの効果との関連について検討する予定。
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