• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2023 年度 実施状況報告書

マイクロビオーム・メタボローム統合解析による、新規がん治療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 22K07293
研究機関東北大学

研究代表者

今井 源  東北大学, 大学病院, 助教 (80747585)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード大腸癌 / オキサリプラチン / NINJ2
研究実績の概要

大腸がんと細菌の関係性は近年盛んに研究されている。Citrtobacter freundii(C.Freundii)は腸内常在菌であり、かつ大腸がんを初め多種の癌組織内にも浸潤し、腫瘍微小環境を形成している。マイクロビオームの癌細胞に対する影響を検討するため、C.Freundiiの培養液を濾過し、その濾液を大腸癌細胞株に作用させ、癌細胞内での遺伝子変化をRNA-seq解析により網羅的解析を行った。その結果、C.Freundiiにより癌細胞内でNinjurin2(NINJ2)遺伝子発現が低下する事を新たに発見した。NINJ2 shRNA及びNINJ2過剰発現プラスミドの大腸癌細胞株への導入実験を行い、NINJ2発現低下がオキサリプラチン(進行大腸癌治療におけるKey drugの一つ)の効果を減弱させる事をin vitro実験で証明した。また大腸癌Xenograftモデルを用いたin vivoの検証でも組織内でNINJ2発現が低下する事でオキサリプラチンの効果が低下することを示した。
一連の実験内でNINJ2を過剰発現させることにより、大腸癌に対するオキサリプラチンの殺細効果が維持されることを示しており、このことは将来的にNINJ2を過剰発現させる新たな薬剤の開発を介した、進行大腸癌患者の生命予後を改善させる新規治療法の開発に繋がることを示唆している。現在、C.Freundiiの培養濾液がいかなるメカニズムで大腸癌細胞の遺伝子発現に影響したかを、細菌から分泌されるExtracellular vesiclesの内包物質の解析により明らかにするため、さらに実験を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

上記の通り、体内のマイクロビオームと大腸癌化学療法の関係性の一端を解明した。しかしながら、発見した事実を臨床応用するためには、さらに詳細なメカニズムの解析が必要である。現在、細菌が分泌するExtracellular vesicleの解析を進めており、それに内包されている物質の同定、定量に努めている。同定、定量されれば、そのうちどの物質が癌細胞に遺伝子変異を生じさせ、オキサリプラチンの耐性を生じさせたかが明らかになる可能性がある。現在はその点に重点を置き研究を進めている。

今後の研究の推進方策

体内のマイクロビオーム(腸内細菌叢及び癌組織内細菌叢)の変化が、抗癌剤に対する腫瘍免疫に変化を生じさせることが報告されてきている。
本研究で同定したNINJ2遺伝子は、近年血管内皮の炎症を制御するレギュレーターであることが発見報告された(Wang Jingjing et al. Cell Signaling. 2017Jul:34:231-241)。NINJ2がTRL4と相互作用することで、NF-kBを制御する事が報告されている。一方でオキサリプラチン投与によりNK-kBの活性が低下することで抗腫瘍効果が発現されることも報告されている(Cascrius S et al. Am J Clin Oncol. 2007 Oct;30:526-530)。これらの事実を統合すると、我々が発見したNINJ2発現低下によりNF-kB活性化が生じ、それを起点にオキサリプラチンの効果減弱が観察された可能性が浮上する。今後はNINJ2発現変化による癌組織内の炎症細胞や炎症サイトカインの定量を行う事で、オキサリプラチン耐性の詳細なメカニズムを解明し、最終的にはオキサリプラチンの耐性を解除させる下目の新規大腸癌治療オプションの確立に努めていく。

次年度使用額が生じた理由

本研究では、抗がん薬オキサリプラチンの効果に影響を及ぼす候補遺伝子を10個抽出し、各遺伝子のノックアウトなど、遺伝子操作による確認検査を行った。遺伝子操作を行うに当たり、shRNA試薬の購入などに費用がかかるが、初めの10個の候補遺伝子の中に目的遺伝子であるNINJ2遺伝子が含まれていた。そのNINJ2遺伝子に関する結果を現在論文投稿中である。
当初の予定は、まず10個の遺伝子に関し遺伝子操作等の検証を行い、それでも目的遺伝子が見つからない場合はさらに10個の候補遺伝子を抽出し、shRNA試薬等を用いて検討を進め得ていく予定であった。今回我々は、質の高いRNA-seq screeningを行えたことの一つの証明であるが、初めの10個の候補遺伝の中に真の目的遺伝子(NINJ2)を見出すことが出来たため、前年度に用いる予算が予定よりも少なくなった。
繰り越した予算は、NINJ2遺伝子や他の候補遺伝子について更なる実験を進めるために使用する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)

  • [雑誌論文] Antibiotics May Interfere with Nivolumab Efficacy in Patients with Head and Neck Squamous Cell Carcinoma2024

    • 著者名/発表者名
      Reio Ueta, Hiroo Imai, Chikashi Ishioka et al.
    • 雑誌名

      Oncology

      巻: 102(3) ページ: 252-259

    • DOI

      10.1159/000533860.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Efficacy of adding levofloxacin to gemcitabine and nanoparticle-albumin-binding paclitaxel combination therapy in patients with advanced pancreatic cancer: study protocol for a multicenter, randomized phase 2 trial (T-CORE2201)2024

    • 著者名/発表者名
      Hiroo Imai, Chikashi Ishioka et al.
    • 雑誌名

      BMC Cancer

      巻: 24(1) ページ: 260

    • DOI

      10.1186/s12885-024-11973-9

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Chylous Ascites Associated with Advanced Pancreatic Cancer That Improved with Appropriate Treatment: A Case Report2024

    • 著者名/発表者名
      Hiroo Imai, Chikashi Ishioka et al.
    • 雑誌名

      Curr Oncol

      巻: 31(3) ページ: 1477-1482

    • DOI

      10.3390/curroncol31030112

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Comparison of efficacy and safety between carboplatin-etoposide and cisplatin-etoposide combination therapy in patients with advanced neuroendocrine carcinoma, retrospective study2023

    • 著者名/発表者名
      Hiroo Imai, Chikashi Ishioka et al
    • 雑誌名

      Oncology

      巻: 101 ページ: 1-9

    • DOI

      10.1159/000534747

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi