研究課題/領域番号 |
22K07308
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
瀬良 知央 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 医員 (80897372)
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研究分担者 |
坪内 泰志 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (30442990)
八代 正和 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (60305638)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | スキルス胃癌 / 放線菌 |
研究実績の概要 |
深海性放線菌からのスキルス胃癌に対する新規治療薬開発を目的として、共同研究者が培養に成功した190種の深海性放線菌ライブラリー中で32種の深海性放線菌の培養上清中にスキルス胃癌を含め胃癌細胞3株以上の増殖抑制作用を示すことを準備試験で確認していた。令和4年度では、さらにそこから検討を重ねることで16種に絞り込み、活性物質の精製法確立を行った。C18固相抽出にてそれぞれの放線菌種に適切な極性を当教室独自のスキルス胃癌細胞株含めた胃癌細胞株3株にて確認。細胞株横断的に再現性を認めることを確認し、さらに既存の放線菌由来抗癌剤であるマイトマイシン、アドリアマイシンも同時に固定抽出を行い、16種の深海性放線菌ライブラリーとは異なる分画での抑制を認めた。これにより16種の放線菌上清の活性物質が既存2種とは異なる新規抗癌活性物質であることが示唆された。また16種の放線菌上清をpHで分けて液液分画を行い、それぞれの放線菌上清のおおよそのpHを推定した。さらにまずは3種の放線菌上清をC18系Preparative HPLCシステムにて分析し、認めたピークを抽出し胃癌細胞株3株にて活性評価を行い、うち1種は癌増殖抑制を呈するピークがほぼ単一になるまで精製するに至った。他2種では胃癌細胞株で増殖抑制は認めず、その理由としてHPLCでの分離解析において200-400nmの波長で実施したが、400nm以降に活性物質が潜んでいる可能性があり、また現状のHPLCでは糖類は抽出できず、薄層クロマトグラフィー等を活用し評価を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍による制限実施もあり、予定していた計画より多少の遅延が認められる。
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今後の研究の推進方策 |
深海性放線菌が胃癌細胞の増殖能に及ぼす影響の検討に関して、まだ手掛けていない深海性放線菌株に由来する抗スキルス胃癌活性物質の精製・構造解析を中心に研究を展開する。詳細な構造データを取得するため、1D-NMRおよび2D-NMRやFT-IRを用いて活性物質の分子団配置を同定する。その後は新規スキルス胃癌細胞増殖阻害物質の作用機序解析を予定しており、細胞内タンパク質の発現変動を解析し、電気泳動上で差を認めた変動タンパク質を抽出した後に、質量分析計を用いてペプチド断片の質量を測定する。ゲノムデータから予測されるタンパク質のペプチド情報と質量分析から得られたペプチド断片の質量を比較し、目的とするタンパク質を同定する。またトランスクリプトーム解析も行い、差分発現解析にて評価を行う。 次に深海性放線菌が胃癌細胞の浸潤能に及ぼす影響について、深海性放線菌の産生する胃癌細胞浸潤阻害活性物質の単離精製を予定しており、遊走能に与える影響を細胞運動イメージングシステム(Incucyte Live-Cell Imaging System)を用いて検討する。上記と同様にHPLC等を使用し浸潤阻害活性物質の精製を行う。増殖能評価と同様に作用機序解析も実施予定である。トランスクリプトーム解析差分発現解析で評価を行う。その結果から、抗スキルス胃癌活性化合物存在時に変動が確認された細胞内タンパク質に対する抗体を作製し、組織免疫染色を行う。ヘマトキシリン・エオジン重染色組織像と併せて、 組織内における定量性および局在性を評価する。本項は動物実験のみの評価系とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による制限実施もあり、予定していた計画より多少の遅延が認められ、その遅れを取り戻すべく、組織・菌培養試薬、浸潤能活性評価器具、固定抽出試薬、精密質量分析試薬、分光光度計試薬、遺伝子解析試薬等が必要となってくる。本研究は培養癌細胞・放線菌上清を用いるため培養試薬が必要である。また浸潤能を評価するためにWound healing assayを行うため浸潤能活性評価器具が必要である。また精密質量分析およびMSn分析を行うための試薬、分子団の配位等の詳細な化学構造の確認のためFT-IR試薬が必要である。そして作用機序解析のためにトランスクリプトーム解析、オミックス解析を行うがそのための遺伝子解析試薬が必要である。
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