Ivermectin(Iver)が、がん幹細胞の指標となるsphereの形成を阻害することを見出したが、そのメカニズムを調べるのに、まず接着細胞とsphereへの感受性の違いを調べた。接着細胞は高濃度でIverを作用させると、sphereと同様に活性形Stat3やSox2の発現減少が確認され生存率も減少したが、sphere形成が抑制される濃度では、生存率や活性形Stat3の発現低下は観察されなかった。よって、Iverはsphereに高感度で作用しており、がん幹細胞を標的とする薬剤となる可能性が示された。 次に、Iverのsphereへの作用機序を調べた。Iverはsphereの形成に必要なことが知られているo-GlcNAC修飾の阻害やo-GlcNAc転移酵素(OGT)の発現を低下させていたので、o-GlcNAcase阻害剤であるPUGNAcとIverを同時に刺激すると、oGlcNAc修飾は維持されたが、Sox2や活性形Stat3の発現減少は抑えることができなかった。しかし、アポトーシス阻害剤であるQVD-OPhとIverの同時投与で、Sox2の発現減少が抑制されることがわかり、Iverによる細胞死誘導が起きていることが示唆された。 がんの再発抑制に対するIverの効果を調べるために、ヌードマウスにGefitinib感受性の肺がん細胞HCC827細胞を移植し、腫瘍を形成させた後、Gefitinibのみを投与し続けた群とGefitinibである程度腫瘍の縮小がみられた後に週に2回GefitinibとIverを投与した群とで腫瘍の再発をI V I Sで測定して比較した。その結果、Gefitinibのみを投与した群では、かなりの頻度で再発が確認されたが、Iverを併用した群では、腫瘍の再発が抑制されることを見出した。
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