研究課題/領域番号 |
22K07318
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
川嵜 圭祐 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (60511178)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 心の理論 / 皮質脳波 / 機能的ネットワーク / 下側頭葉皮質 / 前頭前野 |
研究実績の概要 |
2頭のサルに、上側頭溝を含む下側頭葉皮質と内側部を含む内背側前頭前野にそれぞれ128チャネルと64チャネルの皮質脳波電極を留置した。誤信念動画を繰り返し見せることを避けるために、まず生物学的な動きに対する両領野の神経応答を調べた。生物学的な動きと非生物学的な動きをカテゴリ分けする課題を遂行中のサルから神経活動を計測した。2秒間の動画呈示中の応答を解析した結果、どちらの皮質でも多くのチャネルで生物学的な動きに選択的な応答が得られた。視覚誘発電位は、動画の呈示開始直後に多峰性に最大振幅を示し、呈示後1秒以降では、ほとんどの応答が見られなかった。時間周波数領域で応答を検討したところ、50Hz以上の高周波での応答が顕著に見られ、刺激呈示直後だけでなく、刺激呈示期間中、持続的な応答が見られた。両領野で生物学的なカテゴリに関する情報を持つか調べるために、全チャネルの信号を使ったポピュレーションデコーディングを行い、有意なカテゴリ情報を持つことがわかった。下側頭葉皮質では、低周波と高周波の両帯域で高い判別成績を示し、初期応答でも持続応答でも高周波領域でピークの成績を示した。一方、内側前頭前野では、初期応答でも持続応答でも低周波領域でピークの成績を示した。生物学的な動きに対する情報の空間的な分布を調べるために、チャネル毎のデコーディングを行なった。その結果、これらの情報は上側頭溝や脳回部分の広域に、内側部を含む内背側前頭前野の広域に分布することが明らかになった。独立成分分析によってこれらの分散した部位は、機能底なネットワークを形成していることが明らかになった。最も多くの情報を持つネットワーク間は、上側頭溝や脳回部分を跨ぐように形成されており、周波数特異的な結合方向性を持ちことが明らかになった。また行動観察用セットアップを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心の理論を担う神経ネットワークの前提となる生物学的な動きに対する情報の空間的な分布を明らかにできた。これらの情報は上側頭溝や脳回部分の広域に、内側部を含む内背側前頭前野の広域に分布することが明らかになった。独立成分分析によってこれらの分散した部位は、機能底なネットワークを形成していることが明らかになった。最も多くの情報を持つネットワーク間は、上側頭溝や脳回部分を跨ぐように形成されていることが解明された。心の理論を担う神経ネットワークについて重要な知見が得られたため、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
確立した解析方法を用いて、心の理論を担う神経回路を同定していく。今後呈示する動画の動画の種類を増やしていき、生物学的な動きとして、複数個体の社会的な相互干渉が含まれるような動画を増やし、相互干渉が含まれない生物の動きと比較することで、心の理論の生成を担う神経ネットワークの同定を進めていく。また、ケージ内の複数個体の様子を観察して、行動を定量化するシステムを確立して、これらの神経ネットーワークの機能的な役割を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初記録を予定していた脳領域(①内側前頭前野、②楔前部、③視床枕、④側頭-頭頂接合部、⑤上側頭溝、⑥側頭極)のうち、今期までに①、⑤、⑥からの記録を行なった。複数領域への同時の電極留置することへのリスクを軽減するために、複数期に分けて留置する方法を採用したが、残りの領域からの記録に必要な多チャンネル電極、多チャンネル生体アンプ等の経費が次年度使用額となった。これまでの結果を考慮して、電極の仕様および、留置位置を決定し、それらに必要なル生体アンプ等を購入する予定である。
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