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2022 年度 実施状況報告書

快情動を伴ったエピソード記憶の維持・強化メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K07332
研究機関獨協医科大学

研究代表者

甲斐 信行  獨協医科大学, 医学部, 助教 (50301750)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード記憶 / 情動 / 海馬 / ドーパミン
研究実績の概要

腹側被蓋野(VTA)や青斑核(LC)由来のドーパミン(DA)神経は快情動で活性化されて脳機能を修飾するが、快情動を伴うエピソード記憶の形成にDA神経が果たす役割は知られていない。また、そのエピソード記憶の想起時には快情動が脳内で再現されると推測されるが、その機構は不明である。本年度は、快情動を伴う連合記憶の形成と強化の神経回路メカニズムと、それに関わるDAの機能の解明に取り組んだ。記憶の評価には条件付け場所嗜好性(CPP)試験を用いて、特徴の異なる2つの新奇空間の片方を探索中のマウスに報酬(スクロース又はコンデンスミルク)を与えて文脈(空間の特徴)と報酬の連合学習を行わせ、その翌日に想起テストを行って報酬と連合した空間の選好率をCPPスコアとして評価した。その結果、スクロースのCPP試験において学習時に背側海馬CA1領域にDAのD1クラス受容体の阻害薬を局所投与されたマウスでは対照群に比べてCPPスコアが有意に低下することを見出して、海馬CA1領域のD1クラス受容体の機能が、快情動と場所の連合記憶の形成に必要な可能性を示す結果を得た。そこで学習中の海馬におけるDA放出の動態を調べる目的で、蛍光DAセンサー(dLight1.2又はGRAB_DA2m)を用いて、行動中のマウス海馬からミリ秒単位の時間解像度でDA濃度の変動を検出して行動との相関を解析する実験系を確立した。さらにCPP連合学習に関わる神経回路を同定するため、光遺伝学及び化学遺伝学的手法を適用した、特定の神経路の神経活動を抑制して行動変化を調べる実験系を確立した。一方で、快情動の記憶が薬物等に対する依存・嗜癖の再発に関わる可能性を調べる目的で、スクロースより嗜好性が高いと考えられるコンデンスミルクを報酬に用いたCPP試験を確立して記憶の強度を調べる実験に着手した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度においては、研究計画調書及び令和4年度交付申請書に記載した実験計画における順番と変わらず、記憶形成を評価する行動実験系の構築と光遺伝学的手法を用いて連合学習の機構を証明する実験系の確立に成功している。さらに当初計画に加えて、蛍光DAセンサーを用いた行動時の局所的DA動態を調べる実験系と、依存の再発に快情動の記憶が関わる可能性を調べるためのより嗜好性の高い報酬(コンデンスミルク)を用いたCPP試験の確立にも成功している。さらにいずれの実験においても予備的な結果が得られつつあることから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

今後の研究において、特に令和5年度はエピソード記憶形成における文脈情報と報酬情報の連合機構を解析するために、当該年度で確立した化学遺伝学及び光遺伝学的手法を用いてCPP学習に対する海馬へのDA放出の必要性を検討する。さらに同じ実験系を用いてDA放出の起始核を明らかにしてこの学習の神経回路を同定する実験に着手する。加えて蛍光DAセンサーを用いた学習時及びその後のリプレイ時における海馬のDA動態を調べる実験を開始する。また、これに並行してコンデンスミルクを用いたCPP実験も展開して、その記憶形成の仕組みの特徴や強度をスクロースのCPPと対比して調べると共に、その基盤となる神経回路メカニズムを明らかにする手がかりを得るための実験を行う。

次年度使用額が生じた理由

当該年度に購入予定であった物品(ワイヤレスファイバーフォトメトリー)を購入しなかったために次年度使用額が生じた。翌年度に購入予定である。

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公開日: 2023-12-25  

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