研究課題/領域番号 |
22K07334
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
小川 昭利 順天堂大学, 医学部, 准教授 (30374565)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 社会的意思決定 / 機能的磁気共鳴画像法 / 経頭蓋磁気刺激法 / 視床下部 |
研究実績の概要 |
本研究は、人の社会的な意思決定における視床下部の調節とそのメカニズムを神経核レベルで解明するため、今年度はfMRIとrTMSのパイロット実験を行って、実験機器設定(MRI撮像パラメタなど)と課題設定(試行時間、試行数など)を決定し、Rest-fMRIとTask-fMRIから視床下部神経核の脳活動と機能的結合を解析することとした。 Rest-fMRIにおけるMRI撮像パラメタの調整を行って画像を取得した。機能的結合を用いたBoundary mapping法により、再現性高く視床下部神経核の部位を同定できた。この方法では、視床下部の各ボクセルと大脳皮質との機能的結合(Fisher のz変換後の相関係数)を計算し、大脳皮質の機能的結合パターンが視床下部の隣接ボクセル間でどれくらい異なるかを計算する。大脳皮質の機能的結合パターンが周りと大きく異なるボクセルが神経核の境界(Boundary)を、ほぼ同じボクセルが神経核として同定される。 Task-fMRIでは、食物に関係する意思決定課題を用いて脳活動の計測を行い、視床下部神経核レベルでの脳活動と機能的結合の解析を進めているところである。ここでの機能的結合は、Psychophysiological Interactionにより求めている。また、MRI実験後に、Task-fMRIにおいて呈示した画像の評価を7点のリッカートスケールで行ったので、この評価値も解析に加えることができる。 さらに今年度は、rTMSを用いたネットワークターゲット刺激実験のパイロット実験をRest-fMRIで行い、大脳皮質と視床下部神経核との機能的結合を解析した。結果、視床下部背内側核と後視床下部と刺激部位との機能的結合に変化が見られた。また、刺激部位以外にも機能的結合の変化が見られたことから、視床下部神経核の活動がrTMSにより変化したことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の今年度の予定は、fMRIとrTMSのパイロット実験を行って、実験機器設定(MRI撮像パラメタなど)と課題設定(試行時間、試行数など)を決定し、Rest-fMRIとTask-fMRIから視床下部神経核の脳活動と機能的結合を解析することであった。Rest-fMRIでは機能的結合を用いたBoundary mapping法により再現性高く視床下部神経核の部位を同定でき、Task-fMRIでは食物に関係する意思決定課題を用いて脳活動の計測を行い、視床下部神経核レベルでの脳活動と機能的結合の解析を進めているところである。以上のように、今年度予定していた研究をほぼ終えることができた。さらに、TMSを用いたネットワークターゲット刺激実験のパイロット実験をRest-fMRIで行い、大脳皮質と視床下部神経核との機能的結合の解析まで進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降、rTMSを用いたネットワークターゲット刺激(NTS)とTask-fMRIを組み合わせることにより、まず、社会的意思決定の行動が変化することを確認するとともに、意思決定に関わる行動的要因(例えば、他者への共感の強さ)からNTSの効果を評価する。そして、Task-fMRIで計測された脳活動から、社会的意思決定における視床下部の神経核レベルでの影響とそのメカニズムを明らかにする。さらに、Task-fMRIにおける意思決定行動と視床下部神経核の活動をより大きく変化させる刺激部位を探索して、NTSを最適化する実験を行う予定である。 以上のデータをまとめて、国内学会(日本神経科学会大会を予定)および国際学会(Society for NeuroscienceまたはOrganization for Human Brain Mappingのannual meetingを予定)において研究成果を発表する。そして、論文を国際ジャーナルに投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前倒し支払請求により追加の交付をいただいた。しかしながら、人件費・謝金で繰越(12,359円)が発生したため、次年度に人件費・謝金として使用する予定である。
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