研究課題
今年度は、食品に関係する意思決定課題を用いて視床下部の脳活動を計測するTask-fMRI実験を実施した。Task-fMRIのデータ解析は、Rest-fMRIの画像データからBoundary mapping(BM)法により同定した視床下部神経核の位置データを用いて実施した。BM法では、視床下部の各ボクセルと大脳皮質との機能的結合(Fisher のz変換後の相関係数)を計算し、大脳皮質の機能的結合パターンが視床下部の隣接ボクセル間でどれくらい異なるかを計算する。大脳皮質の機能的結合パターンが周りと大きく異なるボクセルが神経核の境界(Boundary)を、ほぼ同じボクセルが神経核として同定される。Task-fMRIでは食品に関係する意思決定課題を用いて脳活動の計測を行い、視床下部神経核レベルでの脳活動と機能的結合の解析を進めた。その結果、視床下部の室傍核や外側野など意思決定に関係すると考えられる神経核の脳活動は観測されたが、条件間(食品 vs. 非食品)に有意差が見られなかった。また、MRI実験後にTask-fMRIにおいて呈示した画像の評価を7点のリッカートスケールで行ったので、そのデータを画像解析に取り入れた。しかしながら、今回の実験では評価値と脳活動の有意な関係を見出すことはできなかった。これらから、課題を修正して、改めてTask-fMRI実験を実施することにした。具体的には、2つの選択肢から選択する方式から、評価額を直接入力する方式へ修正した。現在、修正後の課題を用いてTask-fMRIデータを取得している途中である。これまでのところ、条件間(食品 vs. 非食品)で評価に差が見られている。さらに、生理的要因(空腹・満腹)を追加しており、食品にのみ要因間で評価に差が見られている。
2: おおむね順調に進展している
本研究の今年度の予定は、Task-fMRIを実施して、意思決定における視床下部神経核の脳活動と機能的結合を明らかにし、rTMS実験の刺激標的設定を目指した。Task-fMRIで計測された脳活動データの解析を進めたところ、視床下部の室傍核や外側野など意思決定に関係すると考えられる神経核の脳活動に条件間差が見られなかった。また、MRI実験後に実施した関連する行動実験のデータを脳活動の解析に取り入れたが、こちらも評価値と脳活動に有意な関係がなかった。そのため、課題内容を、2つの選択肢から選択する方式から、評価額を直接入力する方式へ修正した。修正後のTask-fMRIデータを取得している途中ではあるが、条件間(食品vs. 非食品)で評価に差が見られている。さらに、生理的要因(空腹・満腹)を追加しており、食品にのみ要因間で評価に差が見られている。脳活動と機能的結合は現在解析中である。
次年度は、rTMSを用いたネットワークターゲット刺激(NTS)を行った後に意思決定課題を行うfMRI実験を実施する。課題中の意思決定が変化することを確認するとともに、意思決定に関わる社会的行動的要因や生理的要因(例、空腹・満腹)とNTSの効果との関係明らかにする。課題中の脳活動をfMRI実験において計測し、視床下部の神経核レベルでの影響とそのメカニズムを明らかにする。以上のデータをまとめて、国内学会(日本脳マッピング学会と日本神経科学会大会を予定)および国際学会(Organization for Human Brain Mappingを予定)において研究成果を発表する。そして、研究成果をまとめて国際ジャーナルに投稿する。
人件費・謝金およびその他の費目で繰越が発生したため、次年度に人件費・謝金およびその他の費目として使用する予定である。
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