研究課題/領域番号 |
22K07342
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
佐藤 幸市 群馬大学, 生体調節研究所, 准教授 (00302498)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | プロトン感知性受容体 / 脳虚血 / ミクログリア / 脳内炎症 / 酸性pH / 微小血管内皮細胞 / G蛋白共役型受容体 |
研究実績の概要 |
中枢神経系のpH変化は神経機能に重篤な影響を及ぼすと考えられるが、そのメカニズムは依然不明である。脳神経系にはpH 7.6~6.0を感知するOGR1受容体ファミリーが発現している。本研究では、プロトン感知性受容体(TDAG8、GPR4)が脳虚血・再灌流後の組織傷害や脳微小血管のバリア機能にどのように関わっているか、受容体欠損マウスの中大脳動脈の虚血モデル解析とミクログリアや脳微小血管の内皮細胞での酸性pH応答解析によって明らかにする。令和4年度では、虚血再還流後の中大脳動脈虚血モデルを用い、TDAG8欠損マウスではミクログリア活性制御と神経系保護作用、GPR4欠損マウスでは脳微小血管のバリア機能制御を解析し、以下のような実績を得た。 (1)虚血・再灌流24時間後のNissl染色では、TDAG8欠損マウスでは梗塞領域の拡大が有意であり、GPR4では低下する傾向が観察された。経時観察の条件を再灌流1ヶ月後まで延長したところ、TTC染色では野生型や受容体欠損マウスにおいて梗塞領域の縮小が観察された。 (2)虚血・再灌流24時間後のミクログリア形態変化を免疫染色にて観察したところ、TDAG8欠損マウスでは活性型ミクログリアが有意に増加していた。この結果から、虚血に伴うpH低下によるTDAG8の神経系保護作用が推測された。 (3)虚血・再灌流後の脳実質内へ血清成分の漏出が捉えられ、梗塞領域との違いが観察された。しかし、血球系細胞の明らかな浸潤を検出することができなかった。脳微小血管のバリア機能制御におけるGPR4の役割を培養細胞にて解析する。 このように、脳組織は虚血によって弱酸性pHに暴露されるが、プロトン感知性受容体(少なくともTDAG8)が pH変化を感知し、脳虚血後のダメージに対して神経系の保護作用を示すと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度では、虚血再還流後の中大脳動脈虚血モデルを用い、虚血・再灌流によるpH変動と脳傷害に対してTDAG8が抑制的に働くこと、ミクログリア活性制御が関わることが考えられた。GPR4は脳傷害の亢進に関わるのではないかと予測して解析を試みたが、虚血・再灌流後の脳組織への血球系細胞の浸潤を観察するまで至らなかった。今後、培養細胞を用いて、このような未解決の項目に関して継続してプロトン感知性受容体の役割を探索する。
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今後の研究の推進方策 |
虚血・再灌流後のpH低下に対するプロトン感知性受容体の役割を明らかにするため、中大脳動脈閉塞による虚血モデルを用いて令和5年度でも未解決の項目に関して継続して行う。また、次年度の研究計画に従い、TDAG8が脳虚血と関連したミクログリアの活性制御に関与しているのか、虚血・再灌流後の脳組織における炎症性サイトカイン産生と受容体の関連性を解析する。さらに、培養ミクログリアを用いて細胞外酸性pH応答を調べる。
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