研究課題
Aβ42の沈着凝集がアルツハイマー病(AD)発症の原因であると考えられている。Aβ42とAβ40は、アミロイド前駆体タンパク質(APP)から産生される主要な分子である。我々は、angiotensin-converting enzyme (ACE)が、2個のアミノ酸を切断してAβ42をAβ40に変換すること(J Neurosci, 2007)、このACEの活性は糖鎖修飾に依存することを発見した(J Biol Chem, 2009)。プレセニリン変異が、γセクリターゼ活性を変化させ、Aβ42/Aβ40比を増加させると理解されているが、今回我々は、PS変異によるAβ42/Aβ40比の増加に、PS変異によるACE活性変動が関与することを明らかにした。PS1欠損細胞から精製したACEは、ACE活性(Angiotensin I to II変換活性)が消失し、さらに、Aβ42-to-Aβ40 変換活性が野生型に比べて有意に低下していた。PS1欠損細胞に野生型PS1を遺伝子導入するとAβ42-to-Aβ40 変換活性ならびにACE活性(Angiotensin I to II変換活性)が完全に回復した。PS1欠損細胞に変異型PS1を導入すると、ACEのAngiotensin I to II変換活性は完全回復を示したが、Aβ42-to-Aβ40 変換活性の回復は不完全であった。これらの結果は、PS遺伝子変異によるAβ42/Aβ40比の増加のメカニズムとして、Aβ産生変化の他に、PS遺伝子変異によるAβ42-to-Aβ40 変換活性低下があると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
プレセニリン変異型家族性アルツハイマー病では、Aβ42/Aβ40比を増加させ、アミロイド蓄積を引き起こすと理解されているが、しかし、そのメカニズムの詳細は不明であった。今回、我々は、プレセニリン1の欠損や変異がACEの糖鎖修飾およびACE活性(Angiotensin I to II変換活性)、Aβ42-to-Aβ40 変換活性に強く関わっていることを明らかにした。Aβ42/Aβ40比を制御する新たな分子機序が示唆された。
今後は、野生型プレセニリン1および変異型プレセニリン1はどのようにACEの糖鎖修飾に影響を与えるのかを解析する。プレセニリン1欠損細胞ならびに変異型プレセニリン1発現細胞からACEを精製し、その活性および詳細な糖鎖構造を解析する予定である。また、プレセニリン2欠損細胞、変異型プレセニリン2発現細胞から、ACEを精製し、ACE活性(Angiotensin I to II変換活性)およびAβ42-to-Aβ40 変換活性を解析する予定である。さらに、これらの細胞から精製したACEの糖鎖構造とACE活性(Angiotensin I to II変換活性)およびAβ42-to-Aβ40 変換活性との関連を明らかにする予定である。
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Front Aging Neurosci
巻: 15 ページ: 1098034
10.3389/fnagi.2023.1098034. eCollection 2023
Mol Brain
巻: 16 ページ: 15
10.1186/s13041-023-01005-1
J Neurochem
巻: 164 ページ: 858-874
10.1111/jnc.15750. Epub 2023 Jan 15.
巻: 14 ページ: 902525
10.3389/fnagi.2022.902525