研究課題/領域番号 |
22K07352
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
鄒 鶤 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (40450837)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 家族性アルツハイマー病 / アミロイドβタンパク / Aβ変換活性 / アンギオテンシン変換酵素 / プレセニリン変異 |
研究実績の概要 |
Aβ42の沈着凝集がアルツハイマー病(AD)発症の原因であると考えられている。Aβ42とAβ40は、アミロイド前駆体タンパク質(APP)から産生される主要な分子である。我々は、angiotensin-converting enzyme (ACE)が、2個のアミノ酸を切 してAβ42をAβ40に変換すること(J Neurosci, 2007)、このACEの活性は糖鎖修飾に依存することを発見した(J Biol Chem, 2009)。プレセニリン変異は、γセクリターゼ活性を変化させ、Aβ42/Aβ40比を増加させると理解されているが、今回我々は、PS変異によるAβ42/Aβ40比の増加に、PS変異によるACE活性変動が関与することを明らかにした。PS1欠損細胞から精製したACEは、ACE活性 (Angiotensin I to II 換活性)が消失し、さらに、Aβ42-to-Aβ40変換活性が野生型に比べて有意に低下していた。PS1欠損細胞に野生型PS1を遺伝子導入するとAβ42-to-Aβ40変換活性ならびにACE活性(Angiotensin I to II 換活性)が完全に回復した。PS1欠損細胞に 異型PS1を導入すると、ACEのAngiotensin I to II 換活性は完全回復を示したが、Aβ42-to-Aβ40変換活性の回復は不完全であった。これらの結果は、PS1遺伝子変異によるAβ42/Aβ40比の増加のメカニズムとして、Aβ産生変化の他に、PS1遺伝子変異によるAβ42-to-Aβ40変換活性低下があると考えられる。さらに、驚くべきことに、PS2欠損細胞から精製したACEは、ACE活性およびAβ42-to-Aβ40変換活性が野生型に比べて上昇していた。このことは、PS1とPS2は互いに制御し、Aβ42/Aβ40比を調節することを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プレセニリン変異は、γセクリターゼ活性を変化させ、Aβ42/Aβ40比を増加させると理解されているが、今回、我々は、プレセニリン1およびプレセニリン2の欠損や変異がACEの糖鎖修飾およびACE活性(Angiotensin I to II変換活性)、Aβ42-to-Aβ40 換活性に強く関わっていることを明らかにした。Aβ42/Aβ40比を制御する新たな分子機序が示唆された。特にプレセニリン1およびプレセニリン2は、ACE活性およびAβ42-to-Aβ40変換活性を異なる方向に制御することが明らかになった。プレセニリン1の機能強化およびプレセニリン2の機能抑制は、新たな家族性アルツハイマー病の治療戦略として考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、野生型プレセニリン1および変異型プレセニリン1はどのようにACEの糖鎖修飾に影響を与えるのかを解析する。プレセニリン1欠損細胞ならびに変異型プレセニリン1発現細胞からACEを精製し、その活性および詳細な糖鎖構造を解析する予定である。
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