研究課題
末梢からの感覚情報が初めに通過する脊髄の感覚伝達回路と、精神心理状態が統合される脳との感覚調節回路について、脳から脊髄への直接的な入力に焦点を当て、脳と脊髄の神経回路の特定と、脊髄の痛覚伝達路を直接制御する脳部位の情報や神経特性の解明を試みた。前年度には、神経終末から逆行性に感染し、Cre組み換え酵素を発現する改変型アデノ随伴ウイルスベクターを作成た。このベクターを、Rosa26遺伝子座にloxp配列に挟まれた翻訳停止配列を含むtdTomato発現カセットを持つAi9マウスの脊髄に投与した。本年度では、この結果から得られた情報を基に、脊髄に投射を持つ13の脳領域(前帯状回、一次体性感覚野、視床下室傍核、視床下部外側部、中脳水道周囲灰白質、subparafascicularnucleus、Edinger-Westphal核、赤核、橋網様体、青斑核、小脳中位核、吻側延髄腹内側部、孤束核)について、ベクター投与部位2点間をつなぐ神経のみを標識する実験系を構築し、実験を行った。レポーターマウスを用いた実験系では、投与部位近傍の局所回路も標識されるため、下行性神経の脊髄内での神経終末を区別することが困難であったが、同定された脳領域にCre依存的にEGFPを発現するベクターを投与することで、逆行性に標識された各脳部位から脊髄内への投射様式を可視化することに成功した。各脳領域ごとに投射路が異なり、脊髄内での軸索の投射領域を認識することが可能であったことから、確立した2点間標識手法と、得られた投射様式の情報を基に、神経活動を制御するためのDREADD発現ベクター投与実験の実施が可能になった。
2: おおむね順調に進展している
当初計画のとおり進行している。
各脳領域ごとに異なる脊髄への投射路が明確になり、脊髄内での軸索の投射領域を認識することが可能であったことから、確立した2点間標識手法と、得られた投射様式の情報を基に、神経活動を制御するためのDREADD発現ベクター投与を行い、標識神経の興奮・抑制を制御し、感覚受容の変化について、行動評価を実施していく。
消耗品価格の変動により少額が残った。次年度に使用する消耗品費用に一部に充てる予定である。
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